【d!】忠誠心故に【軍パロ】 (ページ19)

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「ゾム様っ、何を、していらっしゃるんですか！」

  肩で息をしながら、マーレは途切れ途切れに話す。私に覆いかぶさっていたゾムは、立ち上がってマーレに目を向けた。

「あぁ、ちょいと気になることあったからこいつに聞いとったねん。まぁ、質問って言うよりは“尋問”に近いかもなぁ」 

ゾムがこちらに目をやりニヤリと笑った。 
その表情に、全身が震える。植え付けられた恐怖が体から離れず、額に冷や汗が流れた。

「尋問するほどのことがあったんですか？それならばゾム様の手を煩わせるわけにはいきませんので、こちらで対処いたします」

淡々と言葉を連ねるマーレは、さっきまでの元気いっぱいだったマーレとまるで別人だった。こんな状況に晒されているのに、マーレの切り替えの速さに感服してしまう。  

「……せやな、こういうのは得意の類ちゃうねん。こいつはお前に任せるわ」

ゾムは私の腕を引っ張り、マーレのほうに放り投げた。
マーレがしっかりキャッチしてくれたからよかったものの、人を雑に扱うとは何事だ。
怒りに任せてゾムのほうに目を向けると、ゾムはただ無機質に私を見下ろしていた。
まるで、汚物を見るような目で。

「……行きますよ」

硬直してしまった私の手をマーレが引いていってくれる。  

「ころ、しや」

 マーレにひかれるままの体に、上手く働かない頭。ぽろっと漏れてしまった言葉に、思わず口を覆う。 
ゾムの目つきひとつでここまでなってしまうほど、私の精神は衰弱しきっていた。彼のあの目を思い出すと、全身に鳥肌が粟立つ。ここに来たばかりの、やる気で満ち溢れていた私など見る影もない。ただ、恐怖で震えている私だけが残った。
私はこの国のことをなにも理解していなかった。こんなにも恐ろしいなんて、知らなかった。