【d!】忠誠心故に【軍パロ】 (ページ18)

今日:7 hit、昨日:14 hit、合計:17,503 hit

<-17-> ページ18

ゾムはくつくつと喉の奥で笑う。

「お前、N国から来たんやってなぁ？まさかあの国からスパイ送られてくるとは思わへんかったわ」

  フードの中にあるエメラルドの瞳が、私を強く睨みつける。 幸いにも、N国からのスパイだと思われているようだ。
焦燥の中、なんとか冷静を保ち、目の前の殺気の塊に笑顔を向けた。

「まさか。あんな国の言うことなんて聞きたくもありません」 

唯一の本心で語る。言い終えた瞬間、きらりとひかるものが顔の横を通った。
顔スレスレに刺されたそれに、私はひゅっと喉を鳴らすしかなかった。

「そんなん通じるわけないやろ。ほんまのこと言わんかったら、どうなるかわかるやろ」

貫かれそうなほど鋭い目が私をにらみつける。

「本当に、なにもないです」
「わからんやつやな、お前。俺も自分の部屋血で汚す趣味は無いねん」

全力の否定もむなしく、ゾムは刺したナイフを引き抜くと、私の喉元に鋭利な切っ先を当てる。言葉一つ間違えれば生きて帰れないかもしれない。そんな状況に息をのむ。

「別に拷問やなくても吐かす方法はあんねんで？」

ゾムは舌なめずりをすると、私の腕を強く引いた。勢いに飲まれ、私の体は近くにあったベッドに倒れこむ。私が起き上がるよりも先に、ゾムが上に覆いかぶさり、両手を頭上でまとめ上げられた。
今から何をされるのか、さすがの私でも察しがつく。

「離して！」

必死に暴れるが、今まで書類仕事ばかりだった私には振りほどけるはずもない。

「こんな弱っちい力で俺に勝てるわけないやろ」

彼の眼が鋭く光る。 
いまここで喰われてしまうんじゃないか。
そんな恐怖心で全身が固まり、動けなくなってしまう。

 嫌だ……！
現実から目を背けたくて、瞼を強く閉じたその時、バンッと大きな音が耳を劈いた。 

「……なんの用や」  

瞼を少しずつ開け、扉のほうへ目を向ける。そこに立っていたのは、先程走り去っていったマーレだった。