【d!】忠誠心故に【軍パロ】 (ページ17)

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「失礼しまーす……」

コンコンとノックし、マーレは部屋の様子をうかがう。返答がなかったので、部屋の中には誰もいないようだ。

「あれー？ゾム様どこいったんだろ……頼んだの覚えてないのかな？」

1度扉を閉めて、マーレは腕を組んだ。なにか考え込んでいるようだ。
正直、いないと言われて安心している私がいる。幹部の部屋は私たちメイドや軍兵とは別の棟で、一人ひとり部屋が割り当てられている。幹部ならではの待遇だ。

「よし、私ちょっとゾム様探してくるから先に掃除しといて！」
「え、これ勝手に入ってもいいの？」

そう問いかけるが返答はなく、マーレの方へ向いてもそこには誰もいない。廊下を見渡すと走り去っていくマーレの後ろ姿があった。
置いてけぼりにもだんだんなれてきたな……。

「……どうしよう」

目の前の扉を見つめる。人の部屋に許可なく入るのはだめだと私の良心が言っているが、いつ帰ってくるかも分からないマーレを突っ立って待つのも時間の無駄だ。
……仕方ない、なにか問題が起きてもその時はその時だ。
腹を括って目の前の扉をゆっくり開けた。

「お邪魔します……」

消え入るような声を出しながら、部屋の中を覗く。部屋の中は意外とシンプルで、ベッドに椅子と机のセットがあるくらいだ。
割と普通、と思ったのもつかの間。扉で死角になっていた壁に、びっしりと銃やナイフが飾られていた。そのどれもが手入れされており、かなり愛着が深いようだ。れっきとした戦闘狂で逆に安心した。
持って来た掃除用具の中からほうきをとる。床をはくくらいなら許可がなくても許されるだろう。
どこから始めようか。そう足を踏み出した瞬間。
真上からがしゃん、と大きな音が部屋に響く。見上げる間もなく、手首を掴まれ、私の体は壁に打ち付けられた。何が起こったのか分からないが、今まさに自分の身が脅かされていることだけは理解出来た。

「…初め見た時から怪しい思っとったねん。まさか、初日から仕出かすとはなぁ？」  

言葉が続くにつれ、手首を押し付けられる力も強められる。痛みで嗚咽が出そうになるが、歯を食いしばって必死に耐える。手を振りほどこうと足掻くが、ビクともしないその力に恐怖さえ覚え、自分の無力さに気付かされる。
目の先には緑一色。フードの中から見える翠の瞳が、獲物を狙う虎のようにぎらぎらと光っている。

「……ゾム、様」