【d!】忠誠心故に【軍パロ】 (ページ12)

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「……またやっていらっしゃる」

かきん、かきん、と、何かが激しくぶつかり合うような音が響く廊下で、先を歩くメイド長は足を止めた。メイド長の視線の先には、武器を持った二人が暴れ回っていた。赤いニット帽の人が振り下ろすシャベルを、フードを深く被った人は後方へ飛びのき、華麗に避けた。大振りな動作で生まれた隙を見逃さず、フードの人はすかさずニット帽の人をナイフで切りつける。しかし、ニット帽の人はすんでのところで体をそらして事なきを得た。2人は体制を立て直すため、お互いに距離を取り、相手の出方を伺っているようだ。
メイド長の様子から、二人は敵同士というわけではないようだ。なぜ戦闘しているかはわからないが。

「ゾム様、シャオロン様！トントン様に言いつけますよ！」

呆れ顔のメイド長は、腰に手を当てて大声を上げる。戦闘中の彼らも、突然の大声にびくっと肩を震わせ、二人同時にメイド長へ目を向けた。メイド長が様付けするということは、彼らも幹部のようだ。……こんな人通りの多い廊下で戦う幹部ってなんなんだ。

「げ、メイド長……トントン出すんは卑怯ちゃうか？」

シャベルを小脇に抱えながら、ニット帽の彼はそう言った。赤と白のボーダー服に、黄色のオーバーオールを着た彼は、私の存在に気づいたのか、目線をこちらに向けた。

「お、もしかして新人の子？」
「ええ、彼女はメイドのAという子です」

メイド長に紹介され、よろしくお願いします、と頭を下げる。

「おん、俺はシャオロンやで」
「ゾムや」

笑顔で自己紹介するシャオロンの横にいつの間にかいたゾムも続いて自己紹介をする。よろしくな、と朗らかに話しかけてくるシャオロンとは対照的に、ゾムは冷ややかな目で見つめてくる。

「ん、どうしたんやゾム」

ゾムの様子に気づいたシャオロンが話しかけるが、ゾムは別に、と言葉を濁す。そして何も言わぬまま背を向けて去ってしまった。

「なんや、さっきまで楽しそうにしとったのに」
「どうされたんですかね」

シャオロンとメイド長が訝し気にゾムが去っていった方向を見つめる。あのゾムという人はどうやら警戒心が強いようだ。彼の前で下手なことはしないほうがいいな。