【d!】忠誠心故に【軍パロ】 (ページ11)

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「じゃ、俺はここら辺で。」

トントンはそう言って来た道を帰っていった。振り返る瞬間も彼はため息をついていた。
メイド長はそれに気付いているのか否か、満面の笑みで見送っていた。

トントンの姿が見えなくなるまで見送ると、メイド長はこちらを向いた。

「…トントン様に喋りかけてもらっただけで調子に乗らない事ね？」

先ほどとは打って変わって低い声で、メイド長は私を睨んだ。予想だにしない言葉にびっくりして、え、と声が漏れてしまう。調子に乗っているつもりはなかったが、彼女にはそう見えていたんだろうか。

「最近多いのよ。幹部がかっこよかったから、とか、一目ぼれしました、とか。本気で仕事する気がない奴ばっかりでうんざりする。どうせあなたもその一人なんでしょ？」

勘違いにもほどがある。私のどこが彼らに恋しているように見えたのか。むしろ出来るだけ会いたくないというのが本望なのだ。
軽蔑の目で睨みつけてくるメイド長に、違います、と否定の言葉を投げる。しかし、彼女はみんなそういうわ、と私の言葉を受け入れてくれる様子はなかった。

「でもまぁ、仕方がないから仕事を教えてあげるわよ。」

幹部の好感度アップの為にもね、と肩にかかった長い黒髪を払い、メイド長は廊下を歩きだした。
彼女の猫かぶりを見るに、相当幹部のことが好きなんだろう。確かに、彼らは容姿はすぐれていると言ってもいい。話してみた感じ、とても悪い人、というわけではなさそうだったし。
けれど、私の中に渦巻く復讐心がずっと囁いてくるのだ。彼らは私の大事な友人を奪ったんだと。そんな人が悪い人ではないだなんて、あり得ない話だと。
じわじわとにじみ出る憎しみを抑えるため、下唇を噛んでやり過ごす。

こうやって諜報活動をするうえでポーカーフェイスは大事だ、軽率に感情を表に出してはいけない。一つ深呼吸をして、歩き出した。