2004年の残滓【FGO】 (ページ7)

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2017年-エピローグページ7

「……ちゃん、立香ちゃん！」
「んー……んぇ……ダ・ヴィンチちゃん……？」
「もう、居眠りなんてしちゃって。まぁ最近はハードワークだったから、気持ちは分からなくないけどね……」
カルデアスというのは、やはり偉大なものなのだろう。年代を絞ればすぐに資料が出てくる。
1994年の冬木は、至って普通の地方都市だった。これから十年後にこの地で苛烈な戦争が行われ、二十年後には、炎の燃え盛る特異点となることも想像できない。

「……って、君もかいエミヤくん」
ああ、そういえば彼もいた。暖房の定期メンテナンスの手伝いをしていた帰りに鉢合わせてそのままこっちも見ておきたい、と付いて来ていた。意外と言えばそうだが、機械の修理が上手なのだ、彼は。
「……、……あ、ああ。すまない」
うつらうつらと揺れていた頭が止まって、ぼんやりと、今まで夢を見ていた様な声で答える。
「って、サーヴァントが居眠り……？」
「ここではよくあることさ。生きるために伴う行動がサーヴァントは必要無いだけで、べつに出来ないって訳じゃないからね」
「長い期間生きてるみたいに現界してると、実際に生きてる様に思えるみたいな……？」
「まぁ、そんなところだ」
……そういうことも、あるのか。

・

管制室からの帰り道、ふと気になったことを聞いてみた。
「ねぇ、エミヤさん。サーヴァントは夢を見ないんだよね」
「基本的にはそうだな。ただ、睡眠中に生前の記憶を見ることはある。
マスターの夢にそれが流れたり、稀にマスターと意識を共有することも無くはない」

「それからもう一つ、嫌だったら答えなくていいけどさ。……下の名前、なんていうの？」
「…………さあね、忘れてしまったよ」
哀しいくらいの爽やかな笑顔で答えてくれた。

・

(エミヤ士郎。)

それが、本当の名前かは知らない。霊基からも失われた名は、彼にはもう何の意味も無い単語かもしれないし。もしかしたらとんでもない勘違いをしているかもしれない。
だからこれは、心の中にしまっておこう。

きっとその名前を呼ぶのは、私じゃない。