No.81 ページ38
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家に出る時に当然のようにしてきた恋人繋ぎは
水族館に着いてもついぞ離されることはなかった。
燈矢くん、手が大きいから
繋ぐと包容力に安心する……。
けど同時に体格差を感じてどきどきするし、
それを顔に出せば
あからさまに握る力を強くしたり
手の甲を優しくなぞったりしてくるから
完全に遊ばれてる。
ずるいし気が置けない。
彼はいつもと変わらず
黒いパーカーのフードを目深に被って
不審者感満載の格好をしている。
案の定入館する時に少し怪しまれたものの、
なんとか中に入ることができた。
『人少ないね』
「まァこんな時間から入る奴なんて滅多にいねェだろ」
『いいね、二人きり』
「あァ、お前を視界に入れた男を
いちいち燃やす手間が省けた」
『物騒だよ……』
「妥当だろ。
こんなにかわいいAを俺以外の奴が見るなんて
考えただけでイカれそうだ」
『っ、かわいいって……、不意打ちはダメ！』
「なんだよ、また照れてンのか？かわいいなァ」
『ダメだって言ってる……！』
心底愉しそうに揶揄ってくるその悪そうな笑みも、
かわいい、と言う時だけワントーン下がる声も
逐一私の心臓を揺さぶってくる。
……どうか水族館から生きて帰れますように。
そんなこんなで静かで暗い空間を
他愛もない話をしながら歩く。
マグロの水槽の前で嫌そうに顔を顰める燈矢くんや
ふれあいコーナーのヒトデに
キショ、と暴言を吐く燈矢くんが見れて
新たな彼の一面に私はかなり満足できた。
展示も終盤に差し掛かった頃。
クラゲの水槽を見つけて、ふと足を止める。
『クラゲって、死ぬと溶けちゃって
何にも残らないらしいよ』
「なんだ急に」
昔どこかで知った雑学を彼に披露した。
この話を聞いた時に一番に思った。
『……燈矢くんみたいだなって』
蒼と白のコントラストと、どこか儚い図体。
ふわふわと漂っては
時折こっちに来るようで
またどこかへと言ってしまう。
そして最期は、何も遺さず消えていく。
「……言っとくが俺はクラゲじゃねェ。
こんなキショいのと一緒にすんな」
『……、うん』
分かっていても。
もう、二度と失いたくない。
「……心配しなくても、
もう何も遺さず逝ったりしねェよ」
『…………うん、』
「そうやって一人で悩むなよ。
今は楽しいことだけ考えようぜ、な？」
彼の優しさが、温かくて。
やっぱり彼には勝てないな、と思った。
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しゅん - 涙なしでは見れない作品だ…😭こんな涙腺崩壊した小説ないよぉ…！もうこれは名作と言っていいのでは！？ (2023年3月19日 19時) (
レス) @page45 id: 58dfe2492c (このIDを非表示/違反報告)
mist927(プロフ) - 燈矢だと気づいた時の…彼女の心の声…燈矢の彼女への告白のシ−ンは涙がポロポロ…で感動しました😭不遇だった燈矢をこんなにも愛してくれる女性がいてくれたらと思っていたので嬉しくて嬉しくて…素敵な二人ですね😊続きを楽しみにしております🙇 (2023年1月6日 18時) (レス) id: b76e44f0a0 (このIDを非表示/違反報告)
うに太郎(プロフ) - めちゃくちゃキュンとします😭💕続きは書かれないのですか？！ (2022年11月11日 23時) (レス) @page45 id: 717bee0437 (このIDを非表示/違反報告)
ikettyo(プロフ) - 貴方様の語彙力はどこから出てきていらっしゃるのですか…まじ尊敬します。 (2022年8月8日 20時) (レス) @page45 id: 6e023ebe5b (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 冷夏さん» そう言っていただけて嬉しいです〜😭‼️‼️ありがとうございます！！ (2022年6月9日 5時) (レス) id: f09d5f8a63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：無名 | 作成日時：2022年3月27日 7時
