【BL】紅海と言且 (ページ6)

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「A、おはよう」

長い前髪のすきまからくしゃっと細くなった目を覗かせて笑う、御上(みかみ) 麻(あさ)。幼稚園からの仲でお互い唯一の友達。
トレードマークの前髪は目がぴったり隠れるほど長く、美形なのにもったいない。本人曰く「人見知りだから人との壁を作っている」らしい。

それをそうとして。なぜ麻が引っ越したばかりのこのアパートの前まで迎えに来ているのだ。

前の家とそんなに距離が変わらないとはいえ、わざわざ遠回りしてこっちまで来てくれたのか？

「伯母さんに教えてもらったんだけど、嫌だったかな？」

僕の心を読んだのか、悲しげな目つきを見せる。

伯母さんは本当に口が軽い……。

「あ、いや。ひとりで通学するの慣れてないから嬉しい」

いつも登下校全て麻と一緒に居たため、今日からは一人だと思ってた。
思わず口元が緩む。

それに反応するように麻は「良かった」と笑う。周りに花が咲いた気がした。

「忘れ物。」

さあ学校に行こうというところで、背後からダンボールと小さなタッパーを持った圭介が現れた。
おそらくダンボールはゴミに出すもので小さなタッパーが圭介の言う忘れ物だろう。

よく見ると自分がお昼ご飯を入れるために家から持ってきた、弁当箱の一部だ。

「Aの好物だ」

ぱちんとウィンクをしてタッパーを僕の手に置いてくる。カラカラという音を聞くに多分昨日の石チ
ョコだろう。

僕、別にチョコ好きじゃないです。

それを言う前にダンボールを捨てに行って勝手に家の中へ帰ってしまった。

ゲリラ豪雨のように急に来て去っていってしまった。