エピソード70 全ての人にとっての ページ29
Aside
相澤先生のところでまさか泣いちゃうなんて思ってもみなかったから、かなり時間がかかった。
家に帰る予定だったが、そのままアジトに直行した。
アジトの扉をそっと開けると、ソファーに座る死柄木さんと、黒霧さんがいた。
黒霧さんは死柄木さんを手当てしていて、死柄木さんは不機嫌そうに首を掻き毟っていた。
黒霧「Aさん…」
『こんにちは、黒霧さん、死柄木さん。』
死柄木さんは不機嫌真っ只中でまだ首を掻いている。
『今回の奇襲、本気で死ぬかと思った。』
死柄木「こっちは本気で殺しに行ったつもりだったけど完敗だよ。
両足両手撃たれた。手下が弱すぎた。子供も強かった。オールマイトも健在だった…！」
掻き毟る音は速くなり、痛々しい音だけが静寂の膜を破く。
私はその手首を掴んだ。その拍子で白い手が落ちる。
死柄木さんは殺気立った目で睨む。でも怖くない。
その瞳の色は、悲しみの色に包まれていたから。
『ヒーロー側の私が言えることじゃないけど…敵連合は、こんなもんじゃないでしょ？』
驚いたように目を見開く彼の赤を離さないように、目をしっかりと見ながら続ける。
『みんなビビってた。先生も生徒も、勿論オールマイトも。私も死ぬかと思った。
今回の件は余興だよ。これでヒーロー社会にメスを入れられた。
切り開くのは…これからの死柄木さん次第。何百回だって、何千回だって攻められる。だから…』
死柄木「！！？！」
私は、死柄木さんの手を両手で包み込むように握り、目線を合わせる。
『負けないで、ヒーローに。』
私はヒーロー。そしてヒーロー志望。敵である死柄木さんにそんなこと言えるわけない。
でも私は、死柄木さんがスナイプ先生に銃で撃たれたときに心が張り裂けそうになった。
思わず名前を呼んでしまうところだった。駆けつけてしまうところだった。泣くところだった。
我慢するのが、どれほど辛かったことか。
私はヒーローで、死柄木さんは敵。
理不尽に線引きされた境界線が、私が死柄木さんを救うことを拒んだ。
不甲斐ない。ヒーローは全ての人の心を救わなきゃならない。
敵だって一緒。敵になってしまった人には、心が歪んでしまうほどの出来事があったんだ。
それを無視して敵だと言い張って力で痛めつける。それこそ理不尽極まりない。
私は、全ての人にとってヒーローでありたい。
気付けば、死柄木さんの掻き毟る音は止まっていた。
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胡桃 - 励みになります！ありがとうございます^ ^ (2018年5月21日 17時) (
レス) id: c4e799fbe3 (このIDを非表示/違反報告)
さばちゃん@かんづめ(プロフ) - まじっすか！？いやっほー！テストお疲れ様でした！更新無理しない程度に頑張ってください！ (2018年5月18日 20時) (レス) id: d2d6e36cff (このIDを非表示/違反報告)
胡桃 - 死柄木さんいいですよね！テスト終わったのでガンガン更新していきます^ ^ (2018年5月18日 20時) (レス) id: c4e799fbe3 (このIDを非表示/違反報告)
さばちゃん@かんづめ(プロフ) - 死柄木めっちゃ好きっす。更新楽しみにしてまする。 (2018年5月14日 19時) (レス) id: d2d6e36cff (このIDを非表示/違反報告)
胡桃 - はらさん» 教えてくださってありがとうございます！ (2018年5月4日 20時) (レス) id: 7378d7060e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡桃 | 作成日時：2018年5月3日 21時
