05#月隠れの影 ページ7
(Side,薬研藤四郎)
審神者見習い・神無月。
硝子玉みたいな蒼い瞳に飲み込まれそうになる。その瞳の奥には暗闇が広がっていて、不安の色が見え隠れしている。
彼女は闇を抱えているのだと、俺は思う。
「薬研、神無月さんは?」
「琴の後、先に床に就かせた。見張りには堀川の旦那がついてるぜ」
「そう……。初日からこんな大騒ぎに驚いて疲れさせてしまったかしら」
「どうだろうな。俺も色々と踏み込んだこと聞いちまったからなぁ」
酷い境遇に生まれたもんだ。
けれど、神無月は何もなかったかのように振る舞う。それが当たり前。世の常だというような。
「心のケアも大切になりそうね」
「あぁ……。俺も様子見するついでに先にお暇させてもらう」
「分かったわ。おやすみなさい」
「おう」
ソッと大広間を後にし、彼女の部屋に足を向ける。神無月に与えた客間は審神者部屋から真反対の部屋。今は堀川の旦那が見張りについている。
「薬研くん?」
「どうだ」
「疲れてたんだと思うよ。部屋に入ってから何も聞こえないよ」
「……そうか」
確かに何も聞こえない。
「神無月にも話したんだが、旦那と目の色が似ているんだな」
「あぁ、確かにそうかもね」
あの見習いは不思議な奴だ。
否、まだ初日だから分からないだけかもしれない。けれど、そんなものでは無い気がしてならなかった。
生暖かい風が頬を撫で、戸をカタカタと鳴らす。
「そういえば、枕元に香炉と煙管が置いてあったんだ」
「香か。アイツならやりそうだ。歌仙の旦那が言うように、雅なことには精通してるみたいだからな。にしても、煙管か。若い女人が嗜むには
「ははっ、薬研くんは真面目だね」
「どうしてもそういうのは気になるんだ」
香炉に煙管。
香炉には呪具として扱うものも多い。しかし、玄関で術に反応したものではなかった。
「明日、短刀脇差会議にでもなりそうだな」
「だね。その合間は長谷部さんと宗三さんに任せよう」
「あぁ」
(香……白檀みたいだな)
(本当だ。上物そう……)
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作者名：化野燎 | 作成日時：2017年11月5日 0時
