花に囀ずる。【刀剣乱舞】 (ページ33)

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31#天鵞絨の呪いページ33

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天鵞絨(びろうど)。
私よりも後に名を飾った孤児(みなしご)。
まだ、闇の籠で飼われていたらしい。

「余計なことを……。おい、枸杞。此処の審神者を何処にやった」

『教えるとお思いで? ……そんなことする訳がないでしょう』

「隙だらけだ」

いつの間にか天鵞絨(びろうど)の背後を取っていた国広が、容赦なく喉笛を掻き斬った。

「あはは……油断してるとお前もすぐにこうなるからね」

「チッ……」

「か、神無月さん……」

『天鵞絨(びろうど)の死体に触らないで下さいね。穢れが伝染(うつ)りますから』

こういう人たちは死んでもなお、呪詛を振り撒く。死体から呪物に成り下がり、悍(おぞ)ましい化け物になる。

『国広、少しその穢れ祓って。危ない』

「霊符、頂戴」

『祓詞』

「ん……」

此処しばらく、国広に負担にはなるが、穢れ祓いを強めてきた。
ずっと意識空間の中でも彼に教え続けたのだ。

「お前は少なからず俺たちに加担してきた。お前もただでは済まないんだぞ」

『だから、何? 私は罰を受けることを承知で刃を向けているのです』

「うつけ者が」

『どうとでも……』

国広が下がっている間、私は短刀で応戦する。
藤様の刀たちが私に伸びる敵の刃を打ち砕き、私が黒鳶へと向ける刃の道筋を開けてくれていた。

所詮は上でふんぞり返っている腰の重い男。
卑怯な呪詛を用いて応戦することしか能がないことは読めている。“教官”とはよく言ったものだ。
私は夢幻を見すぎだろう。あの時の自分が全くもって馬鹿らしい。

時折掠める黒鳶の刃。
頬を切り、着物の袖を切り裂かれようとも動じてはいけない。一瞬の隙が、魔の入り込む隙になるのだから。

『烈破』

「っく」

遡行軍の戦力を削ってしまえば、黒鳶にはろくな戦闘力は無い。
余裕で私が上回ることが出来る。

……。
今思えば、自分を過信しすぎていたかもしれない。

「う゛あ゛ぁあああああ」

『っ!?』

「貴様の懸念していたことが起こったぞ?」

『愚者共……』

天鵞絨(びろうど)を取り込んだ呪詛。
あれが振り撒く瘴気はあまりにも有害すぎる。

『我が身は我にあらじ、神の御盾を翳すものなり』

((私だけでこの場を凌ぎきるには……))