30#浅葱の絆、闇の軌跡 ページ32
(Side,審神者・藤)
あの刀は……?
堀川国広であっても、あれは何かが違う。
「主。彼女は何故、直接的に遡行軍に追われているんだろうか」
「え……」
「あの男は主が会ったと言っていた彼女の教官なんだろう?」
「えぇ……」
堀川国広と彼女が刃を構える姿は、重なって見えた。長い時間を共にした主従というより、同士のように思えるのだ。
「今、無闇な詮索をするのは良くない……。事が終わり、彼女が話してくれることを私は待ちます」
「……君がそう言うなら僕もそうしよう」
私たちの足元に刺さった桜の簪は強力な結界を保っている。
遡行軍は私たちに見向きもしない。
『国広、背中任せる』
「僕も」
二人の似たような青い瞳が煌めき、神気と霊気が迸った。
周りの遡行軍を刀たちが切り捨て、真ん中にいる黒鳶を守る遡行軍を二人が切り捨てる。
『死ね、黒鳶』
術で吹き飛ばした遡行軍の合間を縫い、神無月さんが刃を黒鳶に伸ばす。
しかし、その時____
「枸杞!」
「____死ぬのは裏切り者のお前だ」
ゲートから飛び出したのは銀色の短髪の青年。
手には太刀が握られていた。太刀を振りかぶったその青年は堀川の刃を払い、彼女を蹴り飛ばした。
『ぐっ……』
「っ……」
「
「黒鳶様、お怪我は御座いませんか」
「あぁ」
まずい。
新手が一人……。
「こんのすけ、ゲート封鎖出来る?」
「藤様の霊力を頂ければどうにか。歌仙様から神力も頂ければ結界まで手が回ります」
「僕からもかい? 勿論、この状況を脱せるのならば」
「では試みますね」
徐々にゲートが塞がり、それを見た堀川が神無月さんに合図し、それに気付いた彼女は相手の隙を見て札を飛ばした。
「チッ……やはり術式展開は早いな」
強固に閉ざされたゲートからはもう遡行軍も入ってきていない。
この中に残されたものだけを叩けばいい。
「ゲート封鎖完了。本丸結界安定値に達しています」
「良かった……」
「しかし、相手はまだ生きてる。あの二人をどうにかしなければ神無月は……」
(こんのすけ、どうにか通信を……)
(回復を試みているのですが、どうにも……)
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作者名：化野燎 | 作成日時：2017年11月5日 0時
