29#刃で闇を散らせ ページ31
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薬研藤四郎が白札を持って戻って来た頃、結界にはヒビが入っていた。
懐にはまだ私の霊力を込めた簪が数本残っていた。
『っ……』
「見習い殿、それ以上の霊力を消費されては危ないかと……」
『平気……。まだ、行けます』
――お前が結界で押し出してるからあんまり分からない。
――――黒鳶がいるかどうか?
――そう。でも、恐らくいるだろうね。
今度こそ、私の息の根を絶やすために。
闇を纏って、私を殺しに来る。
『薬研様、乱様』
「何だ」
「なぁに?」
『この霊符を持って四部隊とも下がって下さい』
「なっ……! 見習い、お前それは……」
『貴方たちを折らせたくはない』
その時、広間からこんのすけを抱えた藤様と歌仙様が慌ててやって来た。こんのすけは藤様の腕から飛び降りると、大きく鳴いた。
「結界破壊! 敵が雪崩れ込みます!!」
「総員臨戦態勢!!」
『っ……藤様!』
私が飛ばした桜の簪は彼女の足元に突き刺さり、結界を展開させた。
そして、共に放った目隠し札により、彼女たちの存在を認識させなくした。
「!?」
『――……(どうか、そのまま……)』
瘴気を纏ってゲートからやって来たのは、顔の半分を骨で覆われた男。
見間違う訳がない。
『黒鳶……』
「やぁ、“枸杞”。この死に損ない」
『開口一番それですか』
「貴様は死ななくてはならない。“我ら”の望む歴史のために」
『そんなこと、させない』
――――国広。
――分かってるよ。
『あはりや、あそばすともうさん、あさくらに……“堀川国広”降りましませ____』
此処で黒鳶を倒さなければ、いけない。
こんなこと繰り返してはいけない。
青白い桜が散り、国広が地面に降り立つ。
「ふふっ……。黒鳶、手出しはさせないからね?」
「チッ……堀川国広か……」
『貴方にこそ、此処で死んでもらう』
私が引き抜いたのは退院してから求めた無銘の短刀。
持ってきておいて正解だった。
「おい、見習い……!」
『生半可な相手じゃありません。手出しなさるなら高練度の方のみで』
「枸杞! それは……」
『全部護ればいいこと』
「ほんと……お人好し」
私は国広と共に、黒鳶率いる遡行軍へと刃を向けた。
今度こそ、闇の刃を砕き、改変される歴史を散らすため。
(死ね、枸杞)
(貴方こそ死んで)
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作者名：化野燎 | 作成日時：2017年11月5日 0時
