15#土方組の勘 ページ17
(Side,和泉守兼定)
また、見習いが舞をしていた。
今日は歌が違った。
それに、祓を口にしていた。
『____如此気吹放てば、国底国に坐す速佐須良比�廚髪梢澄∋�佐須良比失てむ。如此失てば、今日より始て罪と云罪は不在と、賜ひ清賜事天津神国津神八百万神等共に所
石切丸だとかその辺りの刀剣には分かるだろうが、俺にはさっぱりだった。
「神無月さん、今日は厨当番だよ。朝はお務めがあるからお昼からでいいって!」
『それは……気を遣わせてしまって申し訳ありません』
昨晩の不寝番だった乱は、見習いが舞をしている間に身支度を済ませてきたらしい。
其処へ先程何処かへ行ってしまっていた国広が来て、昨日と同じように彼女に手拭いを渡していた。
「後から薬研が迎えに来るけど、僕此処にいるからね!」
『はい、分かりました』
見習いが身支度を整えに部屋に戻ると、国広が此方に振り向いた。
「……気になって来ちゃった?」
「別に、そういう訳じゃ――」
「兼さん、乱くん。あの子ね、何かおかしいんだ」
「え? 堀川さん、何か感じ取ってるの? 僕、昨日から大体一緒だけど分からないよ?」
「気のせい、なのかなぁ……。石切丸さんに相談だけした方がいいよね」
「まぁ、お前が言うなら。警戒は怠るな」
「うん……」
国広の言う“おかしい”。
あの見習い、最初は呪具を持ち込んだとはいえ、それ以外は全くもって素行良好だ。
昨日作った苺の甘味も石切丸がちゃんと調べた。
勿論、何もなかった。
「なぁ、この話、中に聞こえてるんじゃねえのか」
「聞こえてないよ。主さんが一応男所帯だから、って結界の使用を許可したんだって」
「そんなもんなのか」
「恐らく」
そういえば、先程から乱が何かを羽織って機嫌がいい。
ふわりと香るのは白檀。
見習い、か。
「和泉守さんはこの前、神無月さんに貰った甘味どうしたの?」
「茶菓子にした。クコも食った」
「お風呂に入れなかったんだ?」
「入れねぇよ」
その手にはこの前と同じ懐紙。
中身は殆ど同じだろう。
『____身を妨ぐる荒御前、皆去りはてて憂うことなし』
そう聞こえた後、何かがサッと“退いた”気がした。
(この簪可愛い!)
(空いた時間があれば、やらせて頂きますよ)
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作者名：化野燎 | 作成日時：2017年11月5日 0時
