序 ページ1
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特に、此れと言った動機は無かった。
ただの興味本位。
やったら、どうなるんだろう。
それがただ、面白くなってしまっただけ。
歴史修正主義者は“正されてしまった過去”に未練を強く持つ
しかし、私は“正されてしまった過去”に対してどうこう考える対象がなかった。
何となく、気付いた時には歴史修正主義者の手の中にいて、刺客として教育を受けていた。
――あなたは何を変えたいの?
そういう問いは耳が痛くなるほどされた。
けれども、私に目的は無かった。
そんなある日、私は教官に目を付けられた。
「13番。貴様は頃合いだな。名を飾る。来い」
「……はい、教官」
“名を飾る”というのは、頃合いになった者たちに名前を与えるということ。
その日、私には“枸杞”という名前が与えられた。
一部を除き、殆どが植物に関する名前を与えられていた。
――枸杞ちゃんはすごいね。
――――この組の誰よりも術の扱いが上手だよね。
霊力の器が広く、扱える術は難しいものも出来れば、量をこなすことも出来た。
自分に歴史修正をする目的なぞ無いと、ずっと思っていた。
――けれど、それは間違いだった。
「枸杞。お前の存在が危うい」
『今……何と?』
「お前の存在は元より間違った歴史により生まれたものだ」
急に突きつけられた言葉に、私の頭は情報を処理しきれていなかった。
私の存在は間違ったもので、本当はないもの。
「歴史が正されてしまうと枸杞……お前は消えて無くなる。幸い、我らはお前のことを覚えていられるが……」
『私自身の存亡に関わると仰られるのですね。教官様』
「あぁ。我らもお前のような上質な逸材を手離すのはあまりにも惜しい」
『……そうですか』
嗚呼。
やっと、やっとだ。
私が此処にいる意味が分かった。
私という存在を守るために歴史を掻き乱すのだ。
私自身の存亡を賭けて。
「枸杞。くれぐれも無事で」
『……えぇ、教官様。私に御鞭撻頂いたこと忘れません……』
私は、自分を守るために刃を砕き、歴史を散らす。
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作者名：化野燎 | 作成日時：2017年11月5日 0時
