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この日の試合は、阪神が逆転勝利を収めた。
阪神は2点ビハインドで迎えた7回裏、
大山選手の2点適時二塁打で同点となる。
さらにツーアウト満塁のチャンス
中野拓夢選手が走者一掃の適時三塁打を放ち、リードを奪った。
敗れた巨人は投手陣が終盤につかまり、痛い敗戦を喫した。
美子叔母はホクホクとした笑顔で
「今日は帰って気持ちよく眠れる!」
とテンション高めでご機嫌なご様子。
「じゃあ、今日はこれで…」
と、Aは帰るオーラを出す。
「えー!祝勝会はー??」
(出た、お祭りモード)
タイガースが勝利したあと
美子叔母は必ずと言っていいほど呑みたがる。
六甲おろしから始まり、各選手の応援歌を熱唱。
見ず知らずのタイガースファンと歌い、語り
最後は酔い潰れてフィニッシュという
『地獄の朝までコース』なのだ。
しかし、今のご時世ではそれも出来そうにない。
「おばちゃん、今回は大人しく帰ろう。
球場観戦だからこそ、タイガースの選手たちが
恥ずかしくないようにちゃんとしなきゃ。」
「ん゛ー!それを言われると…仕方ない。
じゃあまた今度、ウチに遊びにおいで!」
毎回この手が使えたらいいねんけど…と、
最寄駅の改札口で叔母を見送る。
試合前に言っていた坂本の言葉
『負けても文句言わんように…』
ごめんなさい…勝ちました。
美子叔母、超ご機嫌です。
叔母には内緒にしていたが
試合後すぐに坂本から連絡があった。
『すぐに帰らず待っておくこと』
…実は束縛するタイプ?
待っておけって言われても、どこに居れば
いいんだろう。
叔母を見送った後、また球場前まで引き返す。
たくさんの帰宅する人波に逆らって歩き
人通りの少ない空間を見つけた。
また坂本から連絡があるかと思い
スマホを握ってそこでしばらく待っていると、
Aの目の前に一台のタクシーが停まる。
(ん、タクシーか…)
特に気にも留めなかったが、ドアが開いた瞬間
中からにゅっと手が伸びてきた。
スマホを持つ腕を掴まれ、強引に連れ込まれる。
「やっ…」
突然のことに思考が追いついてこない。
あっという間にAは車内に飲み込まれた。
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作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年9月1日 1時