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坂本の姿が見えたことにAは驚いて隠れようとしたが

スタンドのどこを見渡しても隠れる場所があるわけがない。

あたふたと落ち着きのないその様子は

小動物が危険を察知し

身を隠す場所を探しているようにも見える。





「カサカサと何やってんのや…?」





坂本がそう呟くと、亀井と元木の2人が大笑いした。





「お前の彼女、動物みたいで可愛らしいな!」

「はぁ?!誰が彼女っスか!」




坂本は元木に言われてぶすっとする。





「そんな怒んなや〜。冗談に決まっとるやろ。」

「怒ってないっス。ちょっと引っ込みます。」



亀井にヘルメットとバットを乱暴に渡し、

坂本は三塁側ベンチへと姿を消した。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







坂本が突然現れてAは恥ずかしくなった。

幸いにも本人はベンチへ姿を消してくれたが

自分の胸に手をやると心臓の鼓動が手のひらに伝わる。

ふと前に目をやると亀井がこちらに手を振り、

元木と共にバッティングゲージへと向かっていくのが見えた。

Aは小さく手を振り返す。

ふぅ、と一息ついたところで、タイミングよく

Aのスマホが鳴り響いた。





(叔母さんかな。)





取り出したそのディスプレイには

『坂本さん』

の文字。



…出ないわけにはいかない。

落ち着いていた心臓が、また跳ね上がる。





「はい…」

『なんで今日来ること言わへんの。』





開口一番、機嫌が悪そうである。





「昨日急に決まったんです。叔母が誘ってくれて…」


『叔母さん?後ろにおる人?』





坂本に言われて振り返ると

両手に大量のグッズを抱えている叔母がいた。





「A!買いすぎたからちょっと手伝って!」


『ここからでもよぉ見えるわ。えらい派手な人やん。』





電話の向こうで坂本の笑い声が聞こえる。

Aは立ち上がり、三塁側ベンチをよく見ると

電話を片手に手を振る坂本が見えた。





『叔母さんコテコテの阪神ファンやな。
 悪いけど勝たせてもらうで。』


「あのっ!坂本さん!」


『なんや?』


「が、頑張ってください!」





ありきたりな言葉しか言えなかったが

それでも坂本は笑って受け入れてくれた。





『あははっ、まぁ頑張るわ。
 負けても文句言わんように叔母さんに伝えといてくれな。
 んじゃ、戻るわ〜。』




そう言うとプツリと通話が終了し

坂本がベンチ裏へ帰る姿が見えた。



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作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年9月1日 1時

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