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入り口でチケットを係員に手渡す前に
何気なくそのチケットを見ると
一塁ベンチ側真上の、なかなか良い座席となっていた。
(おばさん、奮発したなぁ…)
決められた入り口から入場し
スタンドへの通路を上がり切った先には
明るく大きなグラウンドが目の前に広がる。
(何度来ても、ここはほんまにステキな場所や…)
心地よい風に吹かれ、Aは感慨にひたる。
ふとグラウンドに視線を落とすと、
ジャイアンツの選手たちが練習を行なっているのが見えた。
吸い寄せられるようにAは近くまで歩を進める。
フェンス越しではあったが、選手たちの真剣な顔がよく見えた。
周りにはカメラを構えているお客さんや
選手に声援を送る子供たち。
(みんなの声が届くといいなぁ)
微笑ましい気持ちに、笑みが溢れる。
「あ！Aちゃん！」
突然誰かに大きな声で呼ばれた。
ドキリとしてスタンドを見回してもAの知った人物はいない。
「こっちこっち！」
そういわれて後ろを振り返ると
グラウンドから亀井が笑顔で手を振っていた。
「かっ！亀井さっ…」
思わず大きな声が出そうになり、慌てて自分で口を塞ぐ。
「もー！今日来るなら事前に教えて欲しかった〜！」
亀井の目尻は溶けそうなくらい下がりっぱなしだ。
周りのお客さんがジロジロとAを見ている。
(亀井さん！しー！静かにして！)
必死に口パクとジェスチャーで亀井に伝えようとするが
「え？なに？」
亀井はぽかんとしており、全く伝わる感じがしない。
周りの目を気にしながら慌てふためくA。
グラウンドからそれを見ている亀井は
ニコニコとさらに嬉しそうだ。
「コラ亀！何しとんや！」
亀井の後ろから元木ヘッドコーチが怒声をあげた。
「いや、勇人の知り合いがね…」
「アホかお前！真面目に練習せんかぃ！
…で、どの子なん？」
亀井はAの方を指さす。
元木が興味津々でその指先を目で辿っていくと
困り顔で慌てているAがいた。
「ほほー！えらい普通やな。勇人にしては珍しい。」
「誰が珍しいんスか。」
「うっわびっくりした。ご本人登場やん。」
驚いた亀井の後ろから坂本が声をかけた。
「Aちゃん来てるで。」
「え。来るなんか聞いてないけど。」
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作者名：おか(´･ω･`) | 作成日時：2021年9月1日 1時
