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「…めちゃええ匂いする…。」
眠い目を擦りながら
良い匂いに誘われてリビングの扉を開く。
そろりとキッチンを覗くと
Aが鼻歌を歌いながら朝食を作っていた。
鍋の蓋がコトコトと音を立てている。
「♪ふんふん、た、ま、ご〜♪」
お椀の卵を混ぜ一気にフライパンへと流し入れる。
器用に菜箸を使って縁の卵を寄せ集め
フライパンを上手に動かしながら
くるくると卵を一つにまとめ上げた。
「でーきたぁ。」
黄色の中に混ざる少し茶色い焦げ目と
出汁の香り、ふわふわとした弾力が食欲をそそる。
お皿を取ろうと振り返ると
明らかに寝起きの坂本が目の前に立っていた。
「ぅわ!びっくりした!」
「うん、おはよう。」
なんとも言えない表情を浮かべて皿をAに渡す。
「あ、ありがとうございます。
まさかずっと見てました?」
「うん、卵〜言うて。ご機嫌やなぁ。
俺の分もある?」
完成した卵焼きを皿へ移す。
声かけてくださいよ!と恥ずかしそうにしながらも
卵の乗った皿をニコニコと坂本に手渡した。
「ええ匂い。もう食べてもええの?」
「先に顔洗ったほうがいいですよ〜。
頭もボサボサですし。」
食卓へ味噌汁を配膳しながら、坂本を促す。
「わかったぁ。」
まるで子供のような返事を1つ。
坂本はいそいそと洗面所へ向かった。
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作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年9月1日 1時