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2日目の朝。Aは早くから目覚めた。



(いつもと同じ時間に起きてしまった…。)



しばらく布団の中でゴソゴソとしていたが

もう寝付けるわけもない。

そのうち、窓からうっすらと日の光が差し込んできた。



(寝てても仕方ないし、起きよ。)



服を着替え、客間から廊下へ出ると

リビングに明かりがついている。



(誰やろ…。)



扉をゆっくり開けると、身支度を整え

コーヒーを飲みながら新聞を読んでいる勇斗の姿があった。



「あれ、おはよう。早いね。」

「おはようございます。もう出掛けるんですか?」

「うん、もうそろそろね。
 帰りは遅くなるし、晩飯はいらんからね。」



昨晩、勇斗は所用で出かけると話していた。

シーズンオフでもマネージャーは忙しいらしい。

その話を聞いて坂本が嬉しそうな顔をしていたのを覚えている。



「そうなんですね。気をつけていってらっしゃい。」

「……Aちゃん、あのさ。」

「はい?」



真剣な顔の勇斗が、立ち上がってAに頭を下げた。



「ど、どうしたんですか?」

「野球のことしか知らんアニキやけど
 アイツのこと、よろしくお願いします。」

「え!ちょっ…頭を上げてください!」




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野球選手としては超一流で

"歴代最強のショート"との呼び声も高い兄。

ゴールデングラブ賞も5度獲得しており

本当に、俺の自慢の兄だ。



けどそれ以外はからっきし。

掃除も洗濯も料理も。

こと女性関係となったらなおのこと。



一時期は酷かった。

それはそれは、目も当てられないくらい遊び倒してた。

もうやめとけば?なんて、何回言ったかわからへんくらい。

でも試合は休まなかった。

どれだけ二日酔いであろうが、絶対に。

そういう部分は本当にすごいと思う。



そんな兄貴の様子が

今シーズンの初め頃から変わってきたんや。

今までに無いくらい練習に打ち込んで

オリンピックでも金メダルを獲得し

秋には史上最年少、通算400二塁打の偉業を達成。

兄貴にとって意味のある一年だったに違いない。



それもこれも、きっとAちゃんが居たから。



時々スマホを覗いてはふっと慈しむような、優しい顔の兄貴。

最初は「気持ち悪っ!」とか言うておちょくってたけど

『これは本気やな』って確信したのは

飛行機のチケットを手配してくれって頼まれた時やった。










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作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年9月1日 1時

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