検索窓
今日:1 hit、昨日:12 hit、合計:24,586 hit

2-29 ページ32

.









坂本の住むマンション近くにあるスーパーで買い物を終え

3人揃って帰宅する。



「ちょっと…買いすぎじゃないですか。」

「そう?普段滅多に買い物せんから

 スイッチ入ってもーたかな?」



あっけらかんと答える坂本の手には

大きな買い物袋が4袋、勇斗の手には

飲み物などを詰め込んだ段ボールが2箱。

マンション内のエレベーターに乗り込み

坂本の自宅のある階で降りる。

長い廊下を進むと、とある部屋の前で立ち止まった。



「ここや。ようこそ我が家へ。」



扉を開けてAを招き入れる。

玄関から続く廊下の先には

リビングが広がっていた。



「うぁ…広い…。」

「どこでも好きなとこ座り。」



坂本兄弟は大量の荷物と共にキッチンへ向かった。

帰宅したばかりの広いリビングは冷え冷えとしており

Aはぐるりと見渡すが、妙にソワソワと落ち着かない。

自分のアパートと比べるのがおかしいのだが

一流のプロ野球選手になるとここまで差が出るのかと悟った。

球児の自宅には何度も訪問させてもらっていたが

妻帯者と独身者の違いも明らかである。



「A〜、手ぇ洗いにおいで…

 …って、何してん。」



ひょいとキッチンスペースから顔を覗かせた坂本は

Aの姿を見て驚いた。

まだ暖まりきっていないリビングの窓際。

窓からの冷気がカーテンの下をくぐり

スーッとリビングへ流れ込む。

そんな窓際の隅のほうで彼女は正座をして座っていたのだ。

その姿が置き物のように見えたのか

プッと吹き出した坂本が勇斗を呼ぶ。



「ちょ、勇斗!見て!」

「なんや、うるさいな。」



坂本に続き勇斗も顔を出すと、その姿に目を丸くする。



「Aちゃん…何してんの?」

「…なんか広々してて落ち着かんくて。」



思わず問う勇斗に、ニコニコと笑い返すA。

それを見た兄弟は声に出さず肩を震わせて笑ってしまった。



「はー、ホンマこの子おもろいなぁ。」

「確かにどこでも好きなとこ座ってええでって言うたけど!

 ホンマお前は…そこは寒いからこっちの暖かいとこにおいで!」



坂本が笑いながらAの側に寄り

そっと彼女の両手を取る。

氷でも握っていたのかと思うほど、その手はヒヤリと冷たい。



「あーあ、こんな冷えて。早よ手ぇ洗お。」



お互いの目が合うと、Aは照れ臭そうに

えへへと笑った。

2-30→←2-28



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
196人がお気に入り
設定タグ:坂本勇人
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年9月1日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。