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「昼メシはデリバリーにして…
晩メシは家で作ろか。Aちゃんリクエストある？」
勇斗は前を向いたまま後部座席のAに質問したが
彼女が答える前に坂本が横から口を挟む。
「お前なぁ、嫌いな物がないか先に聞いたれよ。」
ケンカでも始まるのかと思うほど
荒っぽい口調で弟を嗜める兄。
「お兄様こわっ。」
肩をすくめ、勇斗はミラー越しに目が合ったAに笑いかける。
Aも思わず苦笑いし、少し考えた。
あえて嫌いな物をあげるとするならば…
「レーズン…かなぁ。」
「レーズンて、あの？」
パンやケーキ、サラダなどに入っているドライフルーツの１つ。
乾燥により水分が減らされることでその成分が濃縮される。
糖分がおよそ6割を占めるため、大変甘い。
「…って、Wikiに書いてるあのレーズン？」
スマホを見ながら坂本が驚いた顔をする。
Aも坂本が調べる速さに驚いた顔になる。
「お腹壊してから苦手になっちゃって。」
「レーズンてお腹下すん？！」
Aが小学2年生のころ
祖母に買ってもらったレーズン蒸しパンを食べたら
ひどい吐き気を起こしてしまい嫌いになったそうだ。
「アレルギーかな？」
勇斗がそう言うと、車は赤信号でゆっくり停車する。
流れていた景色が止まり、
目の前の横断歩道をたくさんの人が行き交う。
その様子を眺めていたAはふと、当時の自分を思い出した。
少し無理をするような子だった。
大人の顔色を伺う、とでもいうのだろうか。
食べたくない物でも我慢して食べると
祖母は必ず笑顔でたくさん褒めてくれる。
祖母の笑顔が、彼女は大好きだった。
先のレーズン蒸しパンの話もそうだ。
真四角の形をしており、厚みが3〜4�僂呂△辰燭世蹐Δ�。
祖母の喜ぶ顔が見たくて、無理して全部を食べた記憶が蘇る。
ふふっと、笑みが溢れた。
「どしたん？えらいニコニコして。」
勇斗からは見えない位置で
坂本が優しくふわりと手を繋ぎ直す。
「レーズンが嫌いになった日のこと
思い出してました。」
「嫌いになった日やのに？
普通は思い出したくないやろ。」
「おばあちゃんが慌てて病院に連れてってくれたんです。
ただの食当たりでしたけどね。」
病院の帰宅後、祖母が梅と卵の雑炊を作ってくれた。
少ししか食べることはできなかったが
終始心配してくれた祖母の顔が
今でも忘れられない。
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作者名：おか(´･ω･`) | 作成日時：2021年9月1日 1時
