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2-22 -your turn- ページ25

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「試合、観て行かんの?」



球場へ行く支度をしながら、坂本さんはふと私に聞いてきた。



「今日は…帰ります。」


「そっか。あんまり眠れてないやろし

 昨日のこともあるから

 ゆっくりしてから帰ったらええよ。」



隣の部屋で練習着に着替えた坂本さんは

鏡の前でヘアスタイルのチェックをしている。

鏡越しに私と目が合うと



「今日の俺もカッコええやろ?」



と、ニッと口角を上げてひと言。



「はい、とっても。」


「!……う、うん。」



私がそう言うとは思ってなかったのかな。

自分で聞いといて照れてる。

案外かわいらしいところもあるんやね。





彼も同じようにあまり眠れていないはずなのに

帰ったらゆっくり休めよ、と優しく気遣ってくれる。

そんな彼の優しさに、今日は素直に甘えておこう。





荷物で膨らんだリュックを背中に背負い

出入り口へと向かう坂本さんの後をついていく。

その背中は大きく逞しい。

頼れるキャプテンとして

数々のプレッシャーやファンの声援をその背に受けて

全て自分のチカラに変えてきた人。



私が初めて、本気で大好きになれた人。





彼は準備が整うと

よし、と言ってくるりと私の方へ振り返った。



「Aちゃん。」



両手を広げて笑顔で私を見つめる坂本さん。

え、それって…。



「早よ。時間ない。」



躊躇していると、坂本さんの方から私に近づいてきて

ギュッと抱きしめられた。



「ひぇっ…」


「ほんっま、相変わらず素直やないな!」


「だって!そんな急に…!」



そう言い返すのが精一杯。

チラッと彼の顔を見ると、私のことなんかそっちのけで

満足気な表情の坂本さん。



「うん、よし。これで今日は勝てる。

 部屋の鍵はフロントに預けててな?」


「…はい…。」


「ん〜!あかん!

 ガマンできんくなるからもう行く!」



バットとグローブを鷲掴みにして

坂本さんはバタバタと部屋を出て行った。



彼の居なくなったこの部屋に、優しい彼の匂いがふわりと漂う。

抱きしめられた身体に残る彼の感覚をもう一度

自分で強く抱いた。



嬉しいような、恥ずかしいような感情に

ふふふっと、思わず1人で笑ってしまった。





(坂本さん、今日も頑張ってくださいね)









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作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年9月1日 1時

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