ハッピーエンドになるためにー2ー (ページ17)

今日:15 hit、昨日:12 hit、合計:24,600 hit

2-16 ページ17

.

Aの話をする亀井は

少し寂しそうな表情になっていた。

「本人のおらんとこで勝手にする話やないねんけどな…。」

Aが言うには、元木の顔や雰囲気が

父親に似ているらしい。

元木がジャイアンツのコーチに就任して

半年ほど経った頃だろうか。

電話でAと話したことがあった。

『元木さんはお父さんに似てる』

そう話すAの声が震えていたそうだ。

「おっ…俺の顔はどうしようも無い！」

「ははっ、それは大丈夫っす。
　あの子に『会え』とは言いませんよ。」

ふと、それまで黙って亀井の話を聞いていた坂本が

おもむろに口を開く。

「なんで…。」

「ん？どした勇人。」

「なんで亀さんは知っとんのに、俺には言うてくれんのや。」

「………。」

坂本の予想外のセリフに、亀井は言葉が出なかった。

「俺かてAのこと助けたいのに。
　亀さんや球児さん、梅ちゃんには心開いとんのに。」

いつも助けられてばかりで、自分は彼女に何一つ返せていない。

俺では役不足なんか、と、坂本は悔しそうな表情を見せた。

その様子を見た亀井はため息を１つつき

坂本に向かって諌める。

「Aちゃんは誰よりもお前に心開いてるわ。
　ほんまはお前に言うのイヤやねんけど
　彼女、お前のことばっか話すんやで。」

時々するAとの電話で

彼女の口から坂本の名前をよく聞くという。

坂本はケガなどしていないか、周りのみんなと楽しめているか、

今日もあの笑顔でいるか…。

「嬉しいやら悲しいやら…。
　善行お父さんの心境はとっても複雑やねんで？」

亀井はまるで娘を嫁がせるような、

切ないがそれでいて温かい眼差しで坂本を見つめていた。

「時期が来たら必ず自分から話してくれる。
　あの子はそういう子や。
　お前が1番よぉわかっとるやろが。」

「時期が、来たら…。」

亀井のその言葉を聞いた坂本は

居ても立っても居られなくなった。

ソワソワと落ち着きがなくなる。

「勇人。彼女の心配するのはええけど、
　自分の心配もしとけよ。」

元木が思い出したように坂本に伝えた。

「は？心配すか？」

「単独行動の挙句、女連れ込みやがって。
　レポート用紙5枚。それで許したる。」

「げっ！もし出来んかったら…。」

「監督に報告。」

「誰かレポート用紙持ってないか！」

慌てて部屋を飛び出す坂本。

元木と亀井はその後ろ姿を見て大笑いした。