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エレベーターの中でAは無言だった。

さっきの坂本の言葉にモヤモヤした気持ちで

何も話せないでいた。

その空気を察したのか、坂本がぽつりと呟く。





「…さっきは、ごめん。咄嗟に出てもーたんや。」





ああ、『知り合い』のこと。

平然を取り繕うA。





「あ、いえ…。

 前のこと(写真週刊誌)もありますし、

 実際お付き合いしてるわけでもないですし…。」





本心とは違うことをスラスラと言えてしまう、

Aはそんな自分に対して悲しくなった。

お付き合いしたい、って望んでるわけじゃない。

もしかしたらこのままの関係の方が

お互いに(特に彼の)負担が少なくて

いいんじゃないか?とも思える。





「あのさ、A。」





ふいに坂本がAの方を向いた。

いつになく真剣な表情で

真っ直ぐにその目線をAに向ける。





「試合、見に来てるなんか思ってもなかった。

 偶然にしたら出来過ぎちゃうんかって。

 神様ってほんまにおるんかなーって。

 ほんまはあかんけど、試合中お前のこと考えてた。

 お前に俺のイチバンええとこ見せたかった。」


「………。」





坂本の言葉を黙って聞いていたAの頬が、

どんどん紅潮して行く。





「ほんまは、ここで言う予定ちゃうねん。

 ちゃんとした形で言うつもりやったんやけど…。」





Aを見ていた坂本がそっぽを向いた時

彼のその大きな手がAの右手にそっと触れる。





「A、俺と…」





坂本が言いかけたその時、

エレベーターの停止音と共に扉がゆっくりと開く。

開いた扉の先に、亀井と元木が立っていた。

お互い目があった瞬間、2人は慌てて繋がれた手を離す。





「あっれ!?勇人にAちゃん!」

「なんじゃい勇人!バスにも乗らんと

 堂々と女連れ込みか?!」

「あちゃ…。」





坂本はしおしおと項垂れた。

ふと、亀井がAの顔が真っ赤になっていることに気づく。





「Aちゃん!勇人に何されたんや!」





坂本とAの関係を危惧した亀井は

すかさず2人の間に割って入った。

続け様に元木も坂本の両肩を掴み、Aとの距離を作る。



「よしわかった勇人。今からお前の部屋に行くぞ。

 弁明はその時にせぇ。

 お嬢ちゃん大丈夫か?何もされんかったか?」

「お、お嬢ちゃん…。」





両手で頭を抱える坂本の

長い夜が始まる………









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作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年9月1日 1時

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