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2人を乗せたタクシーが、とあるホテルの前に到着した。
「ここは…？」
「球団でいつも利用してるホテル。」
Aは前を行く坂本より少し遅れてついて行く。
ロビーまで来ると、奥の通路から
体格の良い男性2人がやって来るのが見えた。
「あれ、勇人さん。」
「遅かったっすね。どっか寄り道してたんすか？」
岡本和真選手と廣岡大志選手だ。
「ん？ナイショ。」
「ナイショて。この辺そんなええとこあるんすか？」
岡本がそんな所があるなら連れて行け、
と言わんばかりの視線を坂本に送る。
「アホやな和真。
今のご時世に行ける所なんかないやろ。」
岡本にそう言うと、後ろを振り向いた坂本は
距離を置いて立っていたAに手招きをする。
「「えっ！」」
Aに気づいた2人は、声を揃えて驚いた。
「勇人さんまさか…。」
「堂々としすぎですやん。いろいろ怒られますよ。」
「ちゃうちゃう、知り合いの娘さんや。」
………Aの胸がちくっと痛んだ。
『知り合いの娘さん』
やっぱり自分は、坂本が好きなんだと気付かされてしまった。
だからこんな大したことのない彼の言葉にも
ショックを受けてしまったのだと。
気がつくと坂本のことを考えている自分がいた。
坂本が連絡をよこしてきた時は一喜一憂し、
会話途中で起こる沈黙も
人付き合いの苦手なAには苦ではなかった。
きっと、彼のことが好きなんだろう。
なんとなくそう思い始めていた。
けれど…わかってはいたけれど、
いざそう言われるとさすがに胸にこたえるものがある。
「こ、こんばんは。初めまして。」
それでも坂本を立てるように、と思い、
Aは2人に挨拶をした。
とてもぎこちない笑顔で…。
「どうも初めまして、廣岡です。」
「岡本です。」
「挨拶はもうええやろ。早よ行くで。」
岡本と廣岡の2人をロビーに残し、
坂本は足早にエレベーターへと向かう。
Aは2人にお辞儀をして、坂本の後を追いかけた。
「…和真さん、どう思います？」
「あれはクロやな。」
「ですよね。女の子の顔、ひきつってましたよ。」
「めんどくさいことにならんかったらええけどな。
知らんけど。」
「出た、関西人のよく言う『知らんけど』」
2人はゲラゲラと笑い、自室へ帰っていった。
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作者名：おか(´･ω･`) | 作成日時：2021年9月1日 1時
