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「坂本さん！」
「ん？どないした？」
少しでも坂本が笑ってくれるなら、と勇気を出して
今日の叔母とのやりとりを話すことにした。
口下手でオチのない話をしてしまうA。
関西人のはずなのに…。
「今日一緒にいた叔母が、1年ぶりの甲子園観戦で
グッズをめちゃくちゃ買い過ぎましてですね…。」
持っていた紙袋を坂本に見せた。
中にはぎっちりと詰め込まれたタイガースのグッズ。
メガホンやタオル、キーホルダーにマグカップ、
うちわ、お菓子などなど。
『欲しいやつとか買えるやつ
片っ端から買ってきた！
Aも甲子園久しぶりやろ？
これ持って帰り！』
美子叔母のボルテージが上がり過ぎて
Aにも1袋分購入してくれた。
美子叔母の勢いは試合終了まで止まらなかった。
「ぶはっ！何その数！エグいな！」
「同じ量の袋があと2袋あって
叔母さんがんばって持って帰りました。」
「ほな、それは？カバンに付いてる。」
坂本はAのバッグを指さした。
見るとそこには、付けた覚えのない
中野選手のアクリルキーホルダーがぶら下がっていたのだ。
「あれ！いつの間に！」
「てゆーかなんで中野くんやねん！
ヘソ曲がるわ〜！」
ブスッと口を尖らせる坂本。
そう、いつの間にか美子叔母は
Aのバッグにこっそりと
中野拓夢選手のキーホルダーを取り付けていたのだ。
今日の試合はある意味
彼の粘り勝ちだったと言っても過言ではないだろう。
「美子叔母めぇ…。」
紙袋を握るAの手に、思わず力が籠る。
「ウソや。そんなん気にしてないで。
でもまあ、とりあえず中野くんには
あっち向いててもらおかな。」
坂本はあははと笑い、
キーホルダーをくるりと裏返す。
そしてそのままAの肩に頭を乗せた。
「さかも…」
「中野くんごめんやで。目的地に着くまでな。」
Aの右手に、そっと坂本の左手が添えられる。
Aの心臓は
今にも破裂するんじゃないかと思うくらい
激しく鼓動し始めた。
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作者名：おか(´･ω･`) | 作成日時：2021年9月1日 1時
