2-10 -your turn- ページ11
.
突然の出来事に何が起きたのかわけがわからなかった。
顔を上げると、私の隣にマスクにメガネ、
帽子を目深に被っている男性。
一瞬で(あ、これダメなヤツや)と感じた。
背筋がゾクっとする。
私の表情に気づいたその男は
おもむろに帽子とマスクを外しこちらを向いた。
その顔は、私のよく知った顔だった。
「さっ、坂本さん！？」
「乱暴にしてごめんな。
周りに人がよーけおったやろ。」
彼はメガネを外して気まずそうに笑う。
「…めっちゃ怖かった。
海外に売られると思った。」
「売られるて。ひどいなぁ。」
急に腕を掴まれクルマに引っ張り込まれて
恐怖を感じないわけがない。
あかん、坂本さんの顔見てホッとしたら
泣きそうになってる。
涙を堪えていると、坂本さんが私の顔を覗き込んできた。
近い。
まつ毛長い。
肌キレイ。
目キレイ。
鼻丸い。
「なぁ、怒っとん？
おこ？おこなん？」
半べそがバレているみたいで
坂本さんはニヤニヤと何度も聞いてくる。
「おっ…怒ってます。激おこです。」
「まじ？！うっわこわ！」
言いながらあははと笑う。
(その顔…悪いって思ってないヤツ。)
ふと気づくと、彼は私の手を繋ぎ
ニコニコと笑顔になっていた。
「美味いもん食べに行こか。」
「え、もう21時過ぎてますけど…」
質問には答えない坂本さん。
ずっと笑顔で私の様子を伺っている。
試合、負けたのに…。
なんだか申し訳ない気持ちになってしまい
繋がれた手を離そうとするとギュッと握り返してきた。
「負けたのに機嫌ええなって思ったやろ。」
「えっ」
「機嫌がええわけちゃうで。
そら負けたもん。腹立つよ。」
悪くはなかったんやけどなぁと、
悔しそうな表情で話す坂本さん。
「Aに俺のカッコええとこ見せたかったけど、
ヒット1本だけやった。残念。」
繋いでいた彼の左手が離れ、私の頭をぽんぽんと撫でる。
何か気の利いた言葉の一つでも言えたら
少しは坂本さんの気が晴れるだろうか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おか(´･ω･`) | 作成日時：2021年9月1日 1時
