検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:24,574 hit

2-1 ページ2

.









オリンピックが無事に終わり、ペナントレース後半戦が始まった。

Aは相変わらず学校と家庭教師の仕事で日々を忙しく過ごしている。





写真週刊誌に載ってしまったことも

侍ジャパンの活躍が目覚ましく、見事金メダルによって収束を見せていた。

ただ、今でも何となく視線を感じる日もあるが

そんな時は藤川夫人と一緒に過ごすことに決めている。





「人の噂も75日って言うから。気にすることないわよ。」





というのは藤川夫人の話。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









あの日…アメリカを破って金メダルを獲得した日

表彰式までの時間の合間を縫って、坂本がAに1本の電話を寄越した。





「もしもし、A?金メダル取れたよ。」


「はい!最後までちゃんと見てました!おめでとうございます!」


「ありがとう…お前のことやから、また泣いてんのちゃうかと思ってな。」


「なんでわかるんですか…。」





自宅のテレビの前で1人号泣していたA。

部屋の隅のゴミ箱に、山盛りになったティッシュペーパーが入っている。

ははっ、と笑う坂本にはお見通しのようだ。





「あのさ…こんなん言うのはあんまり得意やないねんけど

 今から俺の話すこと、ちょっと聞いてほしい。」


「は、はい…。」





坂本から改まってそう言われ、誰が見ているわけでもないのに

Aは姿勢を正して座り直す。





「あの時、Aが電話で監督に話してくれんかったら

 今このメダルは俺の手元にないと思う。」



「………。」



「世界の大舞台で俺が野球できたのも、こうやって金メダルが取れたのも

 全部Aのおかげやねん。」





坂本は自分の想いを丁寧に紡いで、1つずつ言葉にしていき

Aは受け取ったその言葉たちを、静かに1つずつ心に刻む。





「ほんまに、ありがとう。」



(勇人さーん、そろそろ時間ですよー)





後ろから誰かの声が聞こえた。もう表彰式が始まる時間だろう。





「うん…よし、言えた。

 まあ、それだけ伝えたかったんや。

 そろそろ行くわな。」



「はい…。」





またな、とひと言残して通話が終わる。

出会った当初は

「こんな人」

なんて思っていた坂本が、今では

「大切な人」

の一人になっている。





坂本の想いの込められた言葉で

Aの胸は、温かい気持ちでいっぱいになった。









.

2-2 -your turn-→←初めに



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
196人がお気に入り
設定タグ:坂本勇人
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年9月1日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。