6話目のお話 ページ6
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だんだんと近づいてきた藤川家の庭では
すでに数人の人影があった
炭の匂いが空腹に響き渡る
あっ！と、藤川の娘がこちらに気づき
大きく手を振って合図した
「せんせー！はやくー！」
その声に急かされ足早に門を潜る
「お！主役の登場やな！」
「就職おめでとう！」
「夢が叶ったやん！おめでとう！」
皆が口々に祝福の言葉を送ってくれた
なんだか気恥ずかしい気もするが
そこは素直に「ありがとうございます」と
笑顔で応える
「おめでとう、Aちゃん！
Aちゃんなら心配いらないって
思ってたわ！ホント良く頑張ったわね！」
藤川夫人がキッチンから駆けつけてきた
彼女はAの母のような存在である
「奥さん、ありがとうございます！」
最初は知人を介して家庭教師としての付き合いだった
が
家族ぐるみで徐々に交友が始まり
ご近所同士ということもあってか
食事や買い物など
頻繁に連れ出してもらうようになった
「あ、奥さん。これ皆さんで…」
「あら！こんなにたくさん！
冷蔵庫に入るかしら？
みんなたくさん持ってきてくれたから…
パパー！手伝ってー！」
スーパーで買った食材とビール3ケース
その隣にある美味しいと評判のお肉屋さんで
(梅野が)買ったちょっとお高い
贅沢なお肉が十数種類
夫人に呼ばれ、いそいそとやってきた藤川は
軍手を外しつつ肉を眺めた
「この肉！あそこの店の美味しいやつ！
Aちゃんええの？こんなお高いお肉」
「いえ！私じゃなくて
梅野さんと秋山さんが…」
チラと2人を見ると、満足げな表情をしていた
「今日の主役はAちゃんですから」
「球児さん、当たり前っすよ」
秋山と梅野は買ってきた食材とビールケースを抱え
庭へと向かった
「Aちゃんの人徳やな」
藤川はにっこりと笑顔でAを見る
Aはなんだか照れ臭くなって
藤川夫人の後を追いキッチンへ向かっていった
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作者名：おか(´･ω･`) | 作成日時：2021年7月4日 19時
