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it's your turn ページ36

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まりは私の話をすべて聞き、全てを信じてくれた

私が涙する理由も、彼女はわかってくれた

ただ、


『大丈夫、きっと大丈夫』


と、それだけを口にした

…それだけなのに、彼女の言葉には何故かとても安心することができた

まりが、親友で良かったと思えた



やっと涙も止まって気持ちが落ち着いたころ

突然私の電話が部屋中に鳴り響いた

まりも私も、その着信画面を見てすぐ、お互いの顔を見合わせた


「A、この人って…」


着信画面に『坂本さん』の表示


きっと週刊誌の件だ


なんだか…怖い…

私の心臓の音が、自分の身体から洩れているんじゃないかと思うほど

鼓動が早くなっていくのが分かる

そんな私の震える手を、まりは強く握ってくれた


「大丈夫、電話に出よう」


私はこくんと頷いて、スマホに手を伸ばした


「…もしもし」

「あ、Aちゃん?今電話してかまへんか?」


坂本さんの声は意味深な雰囲気だった

いつも低めの声が、さらに低く感じる


「はい…大丈夫です」

「ちょっと言いづらいねんけどな…」

「あの、週刊誌のことですか」


まりが隣にいてくれて、とても心強い

おかげで臆することなくその言葉が出てきた


「やっぱ知ってたか…」

「はい、友達が教えてくれました」

「そか…ごめん、俺のせいで迷惑かけて」

「わっ、私の方こそごめんなさい!
 こんな大事な時期にこんなっ、ことに…」


ここまで言うのが精一杯だった

こらえきれずに、涙が堰を切ったようにまた溢れ出てくる



私と居たことで坂本さんと梅野さんが出場できなくなるかもしれない

コロナの影響で昨年より延期になってしまったオリンピック

1年間…皆はじっと耐えてきて、やっと世界の大舞台に立つことが出来るのに

こんな大事になってしまっては、もう誰にも会わせる顔がない…



「ごめんなさい、坂本さん…ごめんなさい」

私はただ謝ることしかできなかった

まりが隣で、私の肩を抱きしめてくれる


「A、泣かんといてくれ
 お前が悪いわけちゃう
 酒も入ってたし、俺が迂闊やったんや

 あ…すまん、ちょっと待ってくれるか」


電話の向こうから誰かに呼ばれた彼は、その誰かとぼそぼそ話している

しばらくすると、耳なじみのない声が電話口から聞こえてきた



「もしもし、Aさん?初めまして、稲葉です」



…稲葉?監督?!

声の主は

日本トップチームの監督、稲葉篤紀さんだった








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作者名:おか(´・ω・`) | 作成日時:2021年7月4日 19時

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