23話目のお話 ページ23
いくつか個室がある中で
1番奥まった座敷個室へ案内される
奥から坂本、その向かいに梅野
梅野の隣にAが座った
「好きなもの頼みや
ここはどれも美味いで」
「俺、魚好きなんスよ」
梅野がメニューからマグロ中落ちが旨そうとつぶやく
程なくして従業員がオーダーを取りに来た
出汁巻、お造り、ローストビーフなど
各々の食べたい物をチョイス
梅野はソフトドリンクを頼んだ
「ん？梅ちゃん呑まんの？」
「いや、すぐ顔に出るっス」
実は梅野、酒に弱かったことが判明した
「まじか！それは知らんかった
ほなまぁ、俺は生ビールやな
アンタも飲むやろ」
「あ、はい…」
Aも坂本と同じ、ビールを頼む
しばらく談笑したのち
頼んだドリンクがテーブルに並んだ
「かんぱーい」
3人はグラスを合わせる
梅野は烏龍茶を一口飲んだあと
ニコニコと笑顔でAを見た
「Aちゃんいつも可愛かやけど
今日はほんま可愛かね〜」
「あのさぁ梅ちゃん
そうやって思ったこと口にするの
聞いてる俺が恥ずかしいねんけど」
坂本が横から口を挟むと、あははと梅野が笑った
言われてAも恥ずかしくなって
耳まで真っ赤になる
そういえば…
あの時、梅野に見損なったと言われた坂本が
自分の何を見損なったのかを聞いてみた
梅野は『ああ』とグラスを傾け
ポツリポツリと話す
「勇人さんは…
お母さんを早くに亡くされましたよね
俺と似た境遇のはずやのに
女性への配慮が足りんな、と
もっと気遣いの出来る人や思ってたから」
2001年、梅野の母親は卵巣ガンのため
34歳の若さで死去している
当時梅野は小学4年生
まだまだ母親が恋しい年齢だ
「居て当たり前と思う家族や友達も
次の瞬間には居なくなるかもしれん
だから、自分の気持ちは
その場で素直に伝える事にしてます」
後悔したくないから
ふっと笑った梅野の表情は
どこか寂しそうに見えた
自分の大切な人たちが
悲しんだり苦しんだりする姿を見るのはもう嫌だ
そんな強い思いのある梅野
あの時の坂本が無責任な態度に見えて
ずいぶんと腹が立ったという
普段呑み慣れない酒のせいもあってか
『先輩・後輩』という立場を忘れて
ついキツい口調になってしまったそうだ
「自分も勇人さんへの配慮が
足りんかったと思います
すみませんでした」
梅野も改めて坂本へ謝罪をした
「俺の周りの全ての人たちは
みんな大切な宝物たい」
梅野はにっこり微笑んだ
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作者名：おか(´･ω･`) | 作成日時：2021年7月4日 19時
