包み ページ34
｢ねぇ獪岳、包みって何？
そんなの持ってたっけ？｣
胡蝶さまが部屋から出ていかれた後、私はベッドの上にいる獪岳の服の袖をくいくいっと引っ張りながら詰め寄る。
｢......浅草の店で買ったヤツだ｣
獪岳は私と目を合わせようとはせず、床を見つめている。
いつの間に買ってたんだろう...。
全然気づかなかった。
｢ボロボロになっちまったし、後で俺が処理する｣
｢......それって、元々は誰かに渡す為の贈り物だったって事？｣
村田さんとか、善逸くんとかに渡そうとしてたのかな。浅草のお土産です...って。
すると獪岳が急にこっちを向いた。
形容しがたい顔している。
怒ってるような、呆れているような顔。
｢はぁ？｣
不機嫌そうに眉を釣りあげて、口元も歪めて怖い顔をする。私にとっては怖くないけど、他の女のコなら泣いてる。
｢ったく......。そんなに気になんなら開けてみろ｣
そういって包みを私に押し付ける。
｢わっ...これ私が開けていいの？｣
何も言わず、顎で催促してくる獪岳。
ゆっくりと包みを開くと、桐箱とお洒落な柄が描かれた黒い缶が入っていた。
どちらも鬼によって開けられた穴が貫通しているし、桐箱は板が外れかかっている。缶もベコベコにへこんでしまっていた。
私はまず、桐箱を開けた。
｢......獪岳これ、凄く高価な石鹸じゃない｣
三個入りの石鹸はろう紙で包まれ、その上から更に上質紙が巻かれている。明治の時代からある国内産の高級品である。しかし、それらはすっかりボロボロになってしまっている。
獪岳は相変わらず無言で、何も言ってくれない。
...流石に傷つく。
私はもうひとつの黒い缶を開けた。
簪、櫛、髪帯や化粧品などが入っている。
どれも酷いことになってしまっているが、上質なものばかりだ。
ほとんどの品が女物だ。......それってつまり、
｢.........ねえ獪岳、これってもしかして...｣
私への贈り物だったって事？
そう言うと獪岳は苦い顔をした。
｢.........ボロボロで使えないだろ｣
｢ううん。そんな事ないよ｣
獪岳の手を取って言葉を続ける。
｢とっても嬉しい。綺麗に治して大切に使うね。
本当にありがとう、獪岳｣
嬉しい。獪岳が私の為に一生懸命選んでくれたのね。
嗚呼よかった。取り越し苦労だったみたい
もし獪岳が私以外の女への贈り物としてこれを買っていたら、その女を刺しにいっていたかもしれない。
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くろすけ(プロフ) - いままでこのお話を読んでくださった皆様、素敵なコメントをくださった皆様、ありがとうございます。ご縁がありましたら、またよろしくお願いいたします。 (10月15日 13時) (
レス) id: 5d290dfab7 (このIDを非表示/違反報告)
くろすけ(プロフ) - それにあたりまして、今後『獪岳と同期の子の話』については、支部にて、「胡麻/瑠璃/ばりぼり/」というユーザー名のアカウントから更新させていただきます。 (10月15日 13時) (レス) id: 5d290dfab7 (このIDを非表示/違反報告)
くろすけ(プロフ) - Ms3さん» コメントありがとうございます。こちらの作品アカウントにログインできなくなってしまったため、今後このサイトから作品を更新することは一切ありません。しかし、私自身この作品に思い入れがあるため、別サイトにて修正、更新をさせて頂こうと思っております。 (10月15日 13時) (レス) id: 5d290dfab7 (このIDを非表示/違反報告)
Ms3(プロフ) - 全て読ませていただきました！今まで読んだ小説で一番好きです…文章の書き方が美しいです…更新まっています。乱文失礼しました。 (2022年1月30日 17時) (レス) id: 97ad62886e (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - 月花さん» わからないです...村田さんは凄く好きなキャラクターなのでお名前知りたいです...、、 (2020年3月19日 10時) (レス) id: 2740432cb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ばりぼり | 作成日時：2020年3月4日 10時
