Secret paradise (ページ26)

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にじゅうろくページ26

『も、もう無理....』

緩い会社の坂道を、洪水みたいに汗を流して息も切れぎれ登っていた。

傾斜は決してキツくはないけれど、それでも山道は山道。

普通ならこんな安物自転車二人乗りで通るような道じゃない。

「A、ふらふらしてるけど」

『死ぬ、、、、』

さっきまで死のうとしてたやつが何言ってんだって感じだけど、

これは本当に死ぬ。

むしろまだ生きているのが不思議なくらいだ。

踏んでも踏んでも回らないペダル。

真っ直ぐに定まらないハンドル。

破れそうな肺。

止まりそうな心臓。

ぼやける視界。

止まらない汗。

足に、少しも、力が入らない。

.....キッと短いブレーキ音が鳴った。

自転車を止めるためっていうより、

後ろに下がっていかないためのブレーキ。

途端に倒れそうになったけれど、

力を振り絞って両足を地面に踏ん張った。

「A、どうした？」

後ろから声がしたけれど、答えることはできなかった。

肺がキリキリして、心臓も爆発していて

声を出すどころか呼吸をするのも精一杯なんだ

少しだけ顔を上げる。

傾斜の緩い、曲がりくねった坂道は、まだ先まで続いている。

大きく息を吐いた。

まだだめだ、ここで止まっちゃダメだ。

もう少し、頑張らないと。

もう一度ペダルに足をかけて吐いた分の息を吸った。

よし、行こう、と思ったその時、ふっとサドルが浮かぶ感覚がして

振り返ると、朝光が荷台から降りていた。

『....えっと、どうしたの？行くよ？』

「うん。行こう。Aはそのまま運転してくれてていいから。
ひとりだと楽だろ。後ろで押しながら走るよ、おれ」

朝光はそう言いながら頼りない真っ白な細い指で荷台を掴む。