Secret paradise (ページ12)

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じゅうにページ12

朝光を見つめ返して立ちすくむ。

笑う顔に言い返せないのは呆れすぎているせいだ。

「お願いA。行きたいところがあるんだよ。そこに付き合ってくれるだけでいい」

もしかして遠回しに私の自殺を止めようとしているのだろうかとも思った。

でも多分そうじゃない。

本心で、自分自身のためだけに言っている。

1人じゃできない何かのために私を欲しがっている。

多分、私を選んだのはたまたまだろうけど、それでも

ここで私を見つけて、一緒に行こう、と私の手を取ったんだ。

あまりにも自分勝手だ。

そんなものに無理やり私を巻き込んで、
私の命の期限を延ばすなんて。

『.....』

汗ばむ私の手のひらとは反対に、

朝光の手は雪のように冷たかった。

正面の瞳を見つめ返す。

こんなふうに誰かと目を合わせることが
またあるとは思いもしなかった。

見上げた空は青い。

何もかも、どうでもいいやと思った。

『いいよ、行ってあげる』

膨らんだ空を仰いで行った。

もうどうにでもなれと投げやりに答えたけれど、

視線を戻せば朝光は満足そうに笑っていた。

「ありがとう、A」

吹いた風は、気持ち悪いくらいに生ぬるくて
ほてった体を冷ましてはくれない。

それなのに朝光のまわりの空気だけは

なぜだか晴れた冬の日のように透明で涼やかに感じた。

『朝光』

初めて口にした名前。

慣れない響きなのに、不思議とくちびるに馴染む。

「何？」

『朝光って、やっぱり幽霊なの？』

聞くと、朝光は「はあ？」と声を上げ、それから大声で笑い出した。