ゴールデンレトリバーとロシアンブルー④ (ページ25)

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バレンタイン～Case of Shogo & Mina～ページ25

ｰ翔吾side

ミナ「翔吾！」

ミナさんが改札から走り出て来る。

ミナ「翔吾、会いたかった！」

翔吾「ミナさん、しーっ！」

慌てて指を唇の前に立てると、彼女はあっ！と両手で口を塞いだ。

首を竦めてすまなそうに言う。

ミナ「ごめん、興奮しちゃって。」

翔吾「ううん、俺も会いたかった。」

そう言うと嬉しそうに笑うミナさん。

ミナ「翔吾、忙しいのに呼び出してごめんね。」

翔吾「ミナさんこそ。
今日仕事終わりでしょ？」

ミナ「うん、でもちょっと早く帰らせてもらったから。」

翔吾「そっか。」

ミナ「うん。」

それでも福井から東京まではそれなりに時間がかかるはずで。

なのに俺に会いに来てくれたミナさんに愛しさが募る。

ミナさんが手を伸ばして俺の頬に触れた。

ミナ「なんか変な感じ。」

翔吾「そうですか？」

ミナ「うん。
だって翔吾、いつの間にかこんなに格好よくなってるんだもん。
昔はどっちかって言うと可愛い感じだったのに。」

翔吾「…俺、格好よくなりました？」

ミナ「なったよ。
見た目も、中身も。大きくなった。」

翔吾「ほんまに？嬉しい。」

ミナさんは笑ってバッグから紙袋を取り出した。

ミナ「ごめんね、本当は作りたかったんだけど時間が無くて…。
もらってくれる？」

翔吾「もちろん！」

ミナ「よかった。はい、どうぞ。」

翔吾「ありがとうございます。
美味しくいただきます。」

ミナ「ふふ、うん。」

風がそっとミナさんの黒髪を揺らす。

ミナ「じゃあ…、ね。」

翔吾「…はい。」

ミナ「今日会えてよかった。
送ろうかとも思ったんだけど、やっぱり自分で渡したくて。」

翔吾「ミナさん。」

俺はミナさんの細い腕を掴んで引き寄せた。

ミナ「…人、見てるよ？」

翔吾「いーの、そんなことよりミナさんの方が優先順位高いから。」

ミナ「ふふ、そう。」

しばらくして身体を離す。

ミナさんは背伸びをして、俺に優しくキスをしてくれた。

翔吾「っ！」

ミナ「Happy Valentine.」

ミナさんはそう微笑んで改札を抜けて行った。

止める間もなく彼女の背中が雑踏に消える。

俺はしばらくその場に立ち尽くして、ゆっくりとしゃがみこんだ。

翔吾「反則やろ…。」

ミナさんは俺が格好よくなったと言ってくれたが、俺からしたら今はまだ全然だ。

いつか、堂々と胸を張って彼女の隣を歩けるように。

彼女の笑顔を守れるように。

頑張ろう、と俺は1人気合いを入れ直した。