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「休まれた方が常磐も安心するはずです。
坊ちゃんどうか部屋でゆっくりされてください」
「弔わせてよ、僕の家臣の1人なんだ」
「……は、」



僕の頼みを聞いて
化野は僕を最初の寝ずの番にしてくれた



「お前もご苦労様」



たった二人きりになった空間で僕は常磐に礼を述べる



「Aの側近がお前で本当に良かった」



今頃2人は会えてるのかな、
なんて考える自分に柄じゃなくて笑っちゃった



「ゆっくり休めよ、常磐」



いつもならありがとうございます
なんて返ってくるんだろうけど、その日は一方通行だった



今日は誰に別れを告げても何も返ってはこないね



Aもそうだった



あんなに僕が離れる事を嫌がってたのに
僕が告げた「ありがとうA。愛してるよ」にも
「暫く会えなくなるね、さよならだね」にも
何にも返してくれなかった



「ったく、」



渋谷事変は世界を変えた
僕の周りのほとんどをこの世から消してしまった



「坊ちゃん、交代の時間です」
「あれ?もう?早くない?」



スマホを開いて時計を見ると1時間経っていた
案外あっさりくるんだね、時間って



「はい。寝ずの番お疲れ様でした。
今度こそおやすみなさい」
「うん、お休み、じゃあね常磐」



死んだ人に話しかけたって本人には届いてないと思うけど



そんなことを考えながら部屋に向かうと
障子を開いた途端、豪華な白無垢が僕の視界に飛び込んだ



「……お前も着てくれる主人を失ったね」



僕が呉服屋で誂させた世界に一つだけの花嫁衣裳
あいつに似合うと思って
早くアイツに着て欲しくて
色んな想像しながら取りに行った白無垢



結局、本人の目に入る前に持ち主は死んだ



「あともう少しで結婚できたのに」



うっかり出た本音に僕はそこで初めて
Aを本当に失ったんだと気がついた
あいつがこの部屋に入ることも無ければ
この廊下を渡ることも
五条家の玄関を出入りすることも
あの声がここに響くことも
もう二度とないんだ



「なんでお前が死んだんだよ、A」



白無垢を触ったって温もりは無いし
冬の気温のせいでいっそう冷たく感じるし



「嫌になるよホント」



本当に、お前まで失うとは思わなかった



お前はしわくちゃのおばあちゃんになっても
僕の隣で笑ってくれてると思ってた



Aは享年27、傑と同じ歳で死んだ



「寂しがり屋だからって僕を置いて傑のとこいくなよ」



僕とお前を繋げられる唯一の「夫婦」にすらなれないまま
……いや、内心怒ってたのかもしれない



〃→←I miss you



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設定タグ:夏油傑 , 五条悟 , 呪術廻戦   
作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作者ホームページ:http  
作成日時:2024年1月9日 21時

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