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その言葉に一瞬皆黙り込んだけど
沈黙を破ったのは七海さんだった
「そう心配せずとも大丈夫でしょう。
五条さんにとって女性で1番なのは貴方ですから」
その言葉に続くように傑も口を開く
「悟は君を奥さんにできないなら
当主の座を降りるって言ってたよ」
「…そう……」
「そんなに自信がないのかい?
こんなに可愛い子を忘れる方が私は無理だと思うよ」
そう話す傑の声はとても切なくて胸が締め付けられた
「……A様!」
そんな時に声が聞こえ
振り向いた先に見えた人に私は考えるより先に体が動いていた
「常磐!!」
「A様!
あぁなんてこと……こんなに早くお会いするなんて」
「何言ってるのよ、私は貴方に会えて嬉しいわ」
「…恐れながらA様
A様は高校時代、とても可憐な方だったのですね」
「…そう?」
「はい」
そういえば私、今高校生の時の制服着てるんだった
「亡くなった人は
生前1番楽しかった頃に姿を変えると言います。
A様にとって青春時代が1番楽しかったのでしょう」
確かに、楽しかったのかもしれない
何も考えずに済んだあの頃が
でも
「悟さんと婚約して
貴方に会えたあの頃だって楽しかったのよ。
どこを切り取っても1番なんて決められないくらい
私の人生は全部楽しかったわ」
甲乙なんて付けられないくらい
色濃くて充実していたから
__いつの間にか私の服装は制服から着物に変わっていた
「A様…もう1人会わせたい方がいるのです」
そう言って常磐は私を傑のところに連れていく
その腕にはスヤスヤと眠る__
「……君と悟の子だよ…」
「…っ!!」
私が産んであげられなかった子……
その子は悟さんと同じ髪色をしていた
「なんて…可愛いの……」
傑から受け取った私は心の声がうっかり漏れ出てしまう
「そう…男の子だったのね……」
産んであげたかった
出来ることならこの手で悟さんにも見せたかった
生きていたらこの子は五条家の跡取りだったのかな
「っ……」
「A!」
「A様…!」
泣き崩れる私に傑達が私を支えてくれた
「私はなんてことを……」
「後悔したらいけないよ、君は精一杯人生を生きたんだから」
「……うん」
悟さん、貴方はもう少し後で来て欲しい
私、ここで待っておくから
貴方がどうやって生きていくのか
ここから見守らせて
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I miss you→←I still remember how much we enjoyed.
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