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Aの記憶はそこで途切れたようだった
「なるほどねぇ」
泣き崩れてるお義兄さん達はともかく
僕は冷静でいられた
憂太がいなかったら
Aは最悪の化け物として終わってたかもしれない
その状況で人として最期を迎えられた
それも、僕の生徒の誰にも汚れ役をさせずに
「ほんと、お前は立派だよ」
当主夫人に相応しい子だった
いや、なってほしかった
本当に眠ってるかのような
穏やかな顔をして目を閉じてるAの頬を
僕は黙って撫でていた
さっきまで温かかったのに体温はもう感じられなかった
「……せめて全部言えよ」
小さな悪態が零れても
それに噛み付く勢いで反撃する言葉はもう返っても来ない
「Aっ!!」
お義母さんもお義姉さんの泣き叫ぶ声だけがそこに響いて
あとは誰も何も発さなかった
いや、発せなかったが正しいかもしれない
「ありがとね、憂太、悠仁」
そんな中僕は2人に礼を述べた
悠仁が傑として接してくれたお陰で
今までの事は全て悪い夢として終えられた
これでAは精神的に追い詰められることから解放される
「……正直Aがこんな最後を迎えることは
僕はあまり想像してませんでした」
この子は色んな人に慕われて
沢山の人に囲まれて
その生涯を穏やかに閉じていくと信じてた
「死んでも死にきれずに次の犠牲者が出るまで
他の堕神とその日を待ち続けるなんて
彼女達はその間どれだけ心細いんでしょうね」
生前散々苦しんだのに
その力を利用されて闇に繋がれるなんて
外せるなら外して壊してあげたいのに
「神力が混ざる禁術は僕でも手が出せないから
余計にもどかしいですよ」
お前は本当にどこまでもやってくれるよね
「………まだ完全に儀式を終えた訳じゃない」
「裏があるんですか?」
「ある」
その言葉を聞いた途端
お義姉さんやお義母さんがバッとお義兄さんに顔を向けた
「ダメよ兄様!!」
「そうよ大翔!!!!何を考えているの」
「じゃあAに永遠に闇の中に繋がれというのか!?」
話によると堕神として闇に引きずり込まれた子を
闇から切り離してただの死者として葬れる方法があって
その方法は真那井家の当主だけができるらしい
ただ、それには落とし穴があって
縛りを破るために堕神達の機嫌を損なわないよう
当主の寿命を半分与えることを引き換えになる
「どうしても命が欲しい堕神はなんなんですかね」
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