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どれだけ愛人を作られても正妻はたった一人だけ
正妻じゃなければ同じ苗字は名乗れないし
正式な場に2人揃って顔を出すことも許されない
ずっと日陰に暮らして表には出てこれないし
同じお墓にだって入れない
そのプライドだけは守ってみせようとしてきた
五条悟の妻は私で、隣を許されるのも私だけ
深層心理に眠り続けていた本心は百鬼夜行直前で爆発した
あの人はそんな私をたまに蛇のように執念深いと笑っていた
そうよ悟さん、私達は蛇のように執念深いのよ
もう忘れたの?
蛇は嫉妬の象徴と恐れられた一面ももつことを
「伊織、私は君が1番だったよ」
そんなことを考える私に羂索はそう語り掛けてきた
「でないと君を正妻にはしないし
毎回戦場にも連れては行かなかった。
子供に恵まれなくても君が1番だったんだよ」
その言葉に私の心がほぐれていくのが分かった
伊織さんはこの言葉がずっと欲しかったんだろう
どこかで力が抜けて行くのがわかった
でも……
「もっとそれを早く言って下されば良かったのに…」
私の声は今まで出したこともないほど低い声を出した
「今更言われたって遅いのよ」
私の中にいる伊織さんの姿が変わっていくのが見える
綺麗だった眼は黒く変わり、片目は蛇のように細い瞳
もう片目は変わらないままだけどどこか冷たく
髪の毛は更に長くなってしまった
これが伊織さんの堕神としての真の姿____
それを見ても私はどこか神秘的だと思ってしまった
何百年と募った悲しみと怒りは
伊織さんを変えてしまったのかもしれない
「側室さえ居なければ、側室さえ居なければ……」
「伊織…」
羂索に焦りと動揺が見えた
【この物がどれほど苦しんだか貴様はわかって居らぬ】
【そなたが殺したようなものであろう】
次々と伊織さんを庇うように他の堕神たちが声を荒げた
【何をしたとてもう無駄じゃ。
Aは妾らと共に闇夜に繋がれる運命よ】
「わかってるよそんなことは」
「それでもこの娘に情が湧いて手を打とうとしているのでしょう!?」
伊織さんの声が私の口から漏れ出る
「憎らしい……私だけなどと言っておきながら…」
「伊織」
「旦那様、一つだけお教え致しましょう。
この娘が身篭ったのはそなたの子では無い」
は?とその場の誰もが動きを停めた
「この子は五条家の血にございます」
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