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僕は補助監督に代わってAの脈を測るけど
Aは脈も動いていなかった
「硝子、緊急なんだけど見れる?」
いつ掛けたのかも覚えてないけど
いつの間にか僕はケータイで硝子に電話をしていた
「良いけどどんな感じなの?学生?」
「いや、A。
目立った外傷なし。ただ、呼吸が止まってる」
「……体温は?」
「まだ温かい」
「できる限りやってみる、今どこにいるんだ?」
「八王子。5分もせずに着く」
「そうしてくれ」
車で行けば20分はかかるし
その間に手遅れになる可能性もある
既に心臓が止まってるからほぼ無理だと僕でも思ったけど
それでも出来ることなら生かしたいと思った
「お前そんなことで死んでいいのかよ」
傑を止めるって言ってたくせに
何に苛立ってるのかもう分からないくらい
誰にでも当り散らしてた
「五条……!」
気がつけば硝子のところに着いていて
固まったまま動かない僕から引き剥がすかのように
Aを台に乗せた
「ぼーっとするならよそでしてくれ!
呼吸が止まってるんだから1秒でも早く処置をしないと危険だ!」
「あ、うん…」
「心臓止まってどれくらいになるんだ!?」
「わかんないよ僕が来た時には
息してなかっ__「あーーーもういい!!
とりあえず出てくれ!」
硝子は間髪入れずにそういうと僕を追い出した
「五条さん」
ふと横を見ると七海が立っていた
いつから居たのか、はたまた僕より先にいたのかは知らない
「家入さんに用事があったのですが緊急が入ったようですね」
「まぁね。Aが死にかけてる」
「Aさんがですか」
「うん。心臓止まってんの」
「……どれくらいですか?」
「さぁ、発見した時には止まってたし…
反転術式でどこまで行けるかなぁってとこ」
ぼんやりと答える僕に冷静ですね、と七海は続ける
「婚約者が死にかけているのに
随分と落ち着いていて驚きました」
「今更でしょ」
Aには傑がいるんだから
そう言いかけて黙り込んだ
誰が聞いているか分からないところで話せば
何かと厄介なことになるしね
「例の呪霊に当たったというのは本当だったんですね」
「そ。これで死んだら僕のせいで上に殺されたようなもんだよ」
ただ、五条悟の婚約者というだけで
嫌がらせをしたい上の連中に命を弄ばれるなんて
Aも大概運の悪い子だと思う
もしAが死んだら、もう二度と僕に反抗する声も
僕を平手打ちして怒鳴り散らす声も
何も聞こえなくなるんだろうな
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