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神力使いは神力使いで羨ましがられることが多かった
例えそれが特級相手でも
力を最大限に引き出させることは妨げられるから
ただ、血を浴びることが出来ないから
致命傷を負わせられないだけ
それでもAにとっては
神力より呪力が欲しかったんだろうと思う
「Aのその術式、本当に羨ましいです」
ある術師が彼女に向かってそう言ったことがあった
その日はちょっと厄介な呪霊がいて
私とAとその他数名が同時に同じ場に呼ばれた
私は呪力の底上げのため
Aは相手の呪力を押さえつけるため
その戦略で行くしか無かったその日
Aが珍しく正装と呼ばれる姿で現れたから
巫女服が二人いる空間になったまでは良かった
一人の術師がAにそう話した瞬間
彼女から笑顔が消えた
「歌姫さんと同じ巫女姿なのにしてることは真反対よ」
「でも相手の呪力を削ぎ落とされるのは強くないですか?」
「どうでしょう。
味方の力まで押さえ付けてますから」
「かっこいいじゃないですか」
ふふ、と笑うAは困っているようだった
「でもとどめを刺すことが出来ないから
ある程度のとこまで来たら私は最前線から引かないといけないのよ」
「死なずに済んでいいじゃないですか」
「……」
Aは何も返さなかった
「私の数十代前の御先祖様がね
同じように御三家に嫁いだことがあったわ」
「へえ」
「でも一夫多妻制の時代だから奥さんが何人もいてね
最初に呼ばれたのは私の御先祖様だったけど
その後すぐに何人も側室を作られたんですって」
「時代ですねぇ!」
「人は御先祖様の事をお飾りだと噂したそうよ。
それもそのはず、側室は皆身篭ったのに
自分だけお手つきにはならなかったんだもの」
「うわぁ、御三家の嫌なとこが露見してますね」
一切笑わないAに対してその術師は表情が次々と変わる
「いたたまれない気持ちになった御先祖様に対して
当時の当主は御先祖様をいつも討伐先につれていった。
きっとその力を失わせるのが勿体なかったのでしょうね」
「いいじゃないっすか!やっぱ力のある人は違うなあ」
「でも神力使いは最後までそばに居られないから
途中で退かないと誰も呪力を最大限に出せないでしょ?
だからさっきまで一緒にいたはずの仲間が次はいなかったりする。
そんな事から神力使いはその遺族の方にも恨まれやすくて
“逃げ御前”だなんて付けられたんですって」
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