ごめんね、そして好きだよ 4 (ページ28)

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お前が何も知らなくて何もかも辛い日々を忘れて生きてるなら
僕はそれ以上関わることをしないよ

君には本当に辛い思いをさせてきたから
きっとショックも相まって抜け落ちたんだろうね
傑が生きてる頃までかな、記憶があるのは

「これは坊ちゃん、お早いお帰りで」
「あぁ、お菓子買うの忘れたわ」
「それを買いに行ったのにですか」

常磐と化野が同時に出迎えて各々が突っ込んできた

「珍しいですね、お菓子には目がなかった坊ちゃんが」
「Aがいた」

僕の言葉に2人の顔がまたも同時に僕に向いた

「A様、見つかったのですね…良かった」
「良くねぇよ」
「……どういう事です」
「A、僕の事何も覚えてない」

その場の時が止まったように2人の動きが止まる

「覚えてないどころか記憶が恐らく10代で止まってる。
僕の事は授業で何度か見かけたお知り合い程度だ」

別にそれが定かでは無いけど
なんとなくあの口調がそう予感させた

不思議だよね、あの頃はその無垢なところさえ
まるで自分はこの世界とは一線違います
みたいに思えて
めちゃくちゃ腹が立ってたのに
今目にしたら何もかもこの手で染めたくなるくらい……

そんな事はいいや

とにかく懐かしくてお前が恋しくて
僕は気がついたらお前との思い出を辿るかのように
またあの菓子屋に行ってた

「あっ…」
「……参ったな。また会ったね」

そしたらまたお前に会ったんだ
まるで何かを試されてるかのような気分だ

「奥様」

侍女は冷や汗をかいてた
そりゃそうだよね、僕がAを連れ帰る可能性もある
でも

「何もしないから少しだけ彼女と2人で話していいかな。
傑には告げなくていい。話すだけだ。
今の夫人には傑が必要なのはよくわかるから
ここで会ったことも僕も口外しない」

記憶をなくしたAを無理やり連れ帰っても
ただ負担をかけるだけだから

「ねぇそこの喫茶店に行こ」

侍女が渋々離れた後僕はAを向かいの店に誘った
お前は忘れてると思うけど
何回かここに二人できたことあるんだよ

「ここにはよく来るの？」
「たまに」
「そっか…それはなんで？」
「傑がここのお菓子を好きだから…」
「……傑がね」

僕との記憶は傑にすげ替えられていた

「五条さんもここのお菓子好きなんですか？」
「……まぁね」
「好きな物まで同じなんて本当に仲良し」

いやまぁ、僕だからねお前のその記憶

「僕の死んだ妻がね
よくここのお菓子を買ってきてくれてたんだ」

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