〃 ページ25
・
「誰か、化野を休ませて頂戴」
指示を出した声が震えていた
「常磐、それを私に読み上げれる？」
「はい」
そう言って手に取った常磐は目を見開いて同じように固まり
やがてワナワナと手が震え始めた
「常磐…？」
「奥様……今から読み上げることは落ち着いて聞いてください」
異様な空気にその場は心臓の音がうるさく聞こえる程
静まり返っていたという
「……“ 五条悟を渋谷事変共同正犯とし呪術界から永久追放
かつ封印を解く行為も罪と決定する…… 」
常磐の言葉に至る所から声が上がる
「ご当主は永久に獄門疆から出られないということか！？」
「そんな馬鹿な…」
「これから五条家はどうなるというのだ」
次々と声があがる中、Aは静かに問いかけた
「私の…聞き間違いかしら……。
あの人が…渋谷事変の共同正犯と聞こえたんだけど…」
しんと静まり返り次の言葉を待つ全員に向け
常磐は視線を伏せる
「いいえ奥様…そのように告げました…」
「呪術界から永久追放というのは
私の耳が悪かっただけよね…？」
「いいえ……」
Aは反射するほど手入れされていた
木目の机の一点を見つめながら静かに問いかける
その声色はますます震えていた
「……ねぇ常磐……私の頭が足りてないからだと思うんだけど
その封印を解くことも罪という事は……
悟さんは今後一生獄門疆から出られないというの…？
そんなの嘘よね……？私の間違いよね……」
「…奥様……」
なんて言おうか、そう常磐も迷ったのだろう
それ程までにAは明らかに様子がおかしくなった
かつて見た事もないほど青ざめていたのだ
本人もわかっていた
もうどうにもならない状態に立たされている事を
それをわかっていて、頭と心が追いつかなかった
だから嘘だと言って欲しいと一縷の望みに駆け出したのだ
それでも返ってきた言葉は変わらなかった
「A様……っ!!!」
「A様……………!!!!」
Aはその場に崩れ落ちた
それまでこの家で隙の1つも見せず
当主夫人になる者として
静かなる威厳を持ち合わせていた彼女が
初めて見せた弱みだった
彼女は呼吸すら上手くできていなかった
それ程までに動揺していたのだ
11年も連れ添って
その大半を派手にぶつかり合う日々ばかり過ごし
お互いの気持ちに蓋をして見て見ぬふりをし続け
本音に気が付かざるを得なかったのは
皮肉にも百鬼夜行の時だった
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 242人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
