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「私達がすべき事はこの家を守る他
戦いに巻き込まれた時にいつでも応戦できるようにする事。
各々が心して生きるように」
緊急事態だというのに冷静に対応し
人を集める正式な場だということで
わざわざ礼装となる着物に着替えたというのだから
流石五条家の当主夫人になる方は肝の据わり方から違う
と誰もが思っていた
__この家は五条悟のワンマンだった
当主が右と言えば右に行くし左と言えば左に行く
そんな指示者がいない今、その代わりとして立てる者は唯1人
当主夫人の座を唯一許されたAだけだった
長く隣で見てきたとはいえいざ自分が当主に代わり
その指揮を取らねばならない彼女にとって
それがどれだけ不安か計り知れない
側を仕えていた常磐は
日頃のAと違うことを直ぐに気がつくほどだった
「A様…」
「大丈夫よ常磐」
「そうは言いましても顔色が…」
「…悟さんは凄いわね。
このプレッシャーをずっと背負ってたなんて…改めて尊敬したわ…。
帰ってきたら連日即完売のケーキを買ってもらないと
割に合わないわよ」
そんな軽口を言って居たのも束の間__
「ちょっと待って……夏油傑は百鬼夜行で死んだはずよ…」
それはあの発令が出た日のこと
「しかし生きていることが確認されています」
「嘘よ!悟さんが祓ったのよ!?
あの人が私に嘘をついたとでも言うの!?」
初めて見せた心に余裕のない姿に一族は言葉も出なかった
「どういうことよ……何なのよ……」
呼吸を荒らげるAに
奥様どうか落ち着いてください、と常磐が背をさする
「悟様の御学友だったと聞いております。
そして奥様のお知り合いだったとも…」
その言葉にハッとした顔を浮かべAは常磐の手を止めた
「ごめんなさい常磐。大丈夫よ」
夏油との関係をひた隠しにすることで
呪詛師と繋がっていたなどという嫌がらせや
根も葉もない噂から守ってくれていたのは五条だった
その五条の努力を水の泡にするわけにはいかない
そんな思いが彼女を我に返らせた
「化野、続けて頂戴」
言われた化野は次の文を読み上げようとして固まった
「……化野、奥様の命令です」
「化野?どうかしたの?」
化野の異変に気がついた者たちが眉をひそめていく
「恐れながら奥様……事態は最悪と思われた方が良いかと」
「……良いから続けなさい」
「私の口からはなんとも」
そう言って今にも倒れそうなほど汗を吹き出している化野に
Aは不安を膨らませていたのだろう
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