ごめんね、そして好きだよ 4 (ページ20)

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「…お前…」
「言霊って知ってますか？
言葉には力が宿っていると古くから信じられています。
呪言が陰の存在だとすれば陽は言霊だというものもいます。
だから……今言ったことが起きないよう撤回してください」

そういった途端、五条さんは声を上げて笑い出した

「お前変わって無さすぎ」
「何の話ですか？」
「いや何でもないよ」

久しぶりに笑った、なんて言いながら五条さんは私を見る

「分かったよ。
僕はまた君に会いに来る、クリスマス以降にも」
「はい」

真っ直ぐ向けられた視線にドキリとしながらも
私は平静を装って微笑んだ

「五条さん、勝って」

私の言葉に今度は五条さんが微笑む

「うん」
「約束の印にこれを」

どうしてかは分からないけど
私はそれをどうしても渡しておきたかった

「ハンカチ……」

五条さんはそれを手にしながらポツリと呟く

「私が初めて刺繍したものなんですけど…
何回落としても必ず私の手元に帰ってくるから」
「なるほどね」

五条さんは何故か嬉しそうにそのハンカチを見つめていた
ただの白地に周りがレースのハンカチだったんだけど
私の後の旦那さんになる人に作ろうと思って
試しに刺繍したものだった

「君が好きな百合の花が刺繍してあるんだね」

五条さんはそう呟く

「はい！」

あれ…？私五条さんに百合の花が好きだなんていつ教えたっけ

「君の大切なハンカチがまた持ち主に戻るようにするよ」
「はい」
「じゃあその時に僕にこれを」

そうして渡されたのは手の込んだハンカチだった

「僕の奥さんが誕生日にくれた手作りのハンカチ」
「ッ！そんなもの受け取れません！」
「いや、受け取って。
君が持っててくれた方がそれ返して欲しさに
意地でも帰ってくるから」

五条さんはそういって半ば強引に
私にそのハンカチを押し付けてきた

「S.G」と白の糸で刺繍された水色のハンカチは
まるで五条さんの瞳と髪を連想させるものだった

奥様はとても丁寧な人だったんだろうと思う

手作りとは思えない程とても繊細に作られていて
五条さんを思いながら作られていたことが伝わってきた

「この約束だけはちゃんと覚えててよ」
「？、勿論です」

五条さんはご機嫌な顔で私の頭をグシャ、と撫でて
「またね」と手を振って背を向けた

私は渡されたハンカチを胸の前で握りしめながら
五条さんが見えなくなるまでその姿を目に焼き付けていた

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