ごめんね、そして好きだよ 2

Incident《主人公》 ページ49

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＿＿＿体が痛くて目が覚めた


ぼんやりとした頭で女はこの場所がどこか考える


フローリングとは違う冷たく硬い床に自分が俯きに寝ていることはわかった


何でここで寝ているのかしら
白いふかふかのベッドがあるはずなのに


そう思ったところで意識がハッキリとする


ハッとして起きようとした瞬間
左手と右足がグン、と引っ張られ
それと同時にチャリ、と金属音が響き渡った


「！？」


困惑した彼女が左手と右足を見ると
そこには鎖に繋がれた自分の手足があるではないか


「起きたんだね」


その声にギョッとして首を正面に向けると
そこには見覚えのある他人が立っていた


「…傑……!!」


声を発した女にゆっくりと近寄る男に彼女は反射的に後ずさる


「そんなに脅えた顔をしないでA。
私だよ。夏油傑さ」
「…貴方は……去年のクリスマスに…祓われたと聞いたわ」


キッ、と睨みあげるが夏油は顔色一つ変えずに言葉を続けた


「本当に悟から聞かされてなかったのかい」
「……あの人が私に嘘をつくはずが無いのよ」
「…随分と過信してるんだね」
「約束してるのよ。隠し事はしないって」


女の言葉に健気だね、とだけ返すとそっと顎を持ち上げる


「君に隠し事をしていたからこういうことになったのに。
昔から君は危なっかしい子だと思ったが、本当に変わらないね」
「……貴方は誰なの」
「…くっ…くく……」


途端、夏油は彼女の問いかけに笑いだした


「君たちはどこまでも似てるんだね」
「……夫婦になるもの。似ていてもおかしくないわ。
それよりも悟さんを返して」
「そのお願いはいくら君でも聞けないな」
「知ったような口ぶりね。傑じゃないのは分かってるのよ」


鋭く睨みつけるが夏油は臆することなく笑う


「そうだとして今の君に何が出来る？」
「…刺し違えてでも悟さんを取り返すわ」


女ははっきりと言い放った


愛する人を忌々しい箱に閉じ込められた挙句
呪術界から永久追放とされ
さらに封印を解くことは罪と決定づけられ
二度と会えないなど御免だ


何度大事な人を失えというのだ


その怒りを込めた言葉の刹那
彼女の首を勢いよく夏油が掴んだ


「今の君の命は私が握っていると思った方がいい。
別に君が死んでも構わないが
五条悟に二度と会えなくなるよう自分から仕向けていいのか？」


額の縫い目を見つめながらAはその男が
かつて誰よりも大事に思っていた恋人の皮を被った別人だと
確信を抱いてしまう


「……私に何をして欲しいの」
「物分りが良くて助かるよ」


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