ごめんね、そして好きだよ 2

〃 ページ43

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俺がAさんの感情が顕になった姿を見たのは
8年近く傍で見ていて、たったの1回しかない


＿＿＿津美紀が呪われた時だ


病室に到着した時、Aさんは五条先生に支えられていて
1人では立てる状態でもなかったと思う


「つみ……っ……」


フラフラと近寄ったかと思えば
津美紀の顔を見た途端一瞬にしてその場に崩れ落ち
声を上げて泣いた


「ごめんね恵。びっくりしたでしょ」
「いえ、大丈夫です」
「実の娘みたいに思ってたからね、
本当は連れてくるの躊躇ったんだけど
連れていかなかったら連れていかなかったで
多分さらに酷いことになったと思うから」


先生は後日そんなことを言っていたと思う


だからこそAさんが
その年の暮れにおかしくなった時は
積み重なったものが爆発して
壊れてしまうんじゃないかとも思った


「で、何の話してたっけ」
「Aさんに親孝行しろって話です」
「あーそうそう！
……Aの毒抜きは僕がするけど
たまには恵からされるの良いと思うんだよね」





ほんの少し前なら、先生はそんな事も言わなかった





知り合いたての時はAさんの話なんてしなかったし
2人は“そんなことは無い”と否定はするが
俺から見てわかるほど二人はその当時は
愛情は通って無かったと思う


俺が中学に上がる頃くらいには
なんとなく気持ちは通ってた気はするが
それでも今に比べたらよそよそしかったし
そうかと思えば今年の春くらいには
彼女を独り占めしたそうだったし
AさんもAさんでベッタリしていた


だから……そんなAさんの毒抜きを頼まれるなんて
今にして思えば
先生は何かに気がついていたのかもしれないと思う






＿＿渋谷事変で先生が封印されるなんて思ってもみなかった






渋谷事変に共犯としていたのは夏油傑だと聞いた時
真っ先にAさんのことが過った



悪い風には考えたくないが
Aさんもこの事件に関わっている気がする







現にAさんの居所は掴めなくなってしまった






どうか無事でいて欲しいと今は祈るばかりだ






終

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