〃 ページ22
「母ちゃん?」
十年前に突然終わった恋__
甘酸っぱい思い出が
まるで走馬灯のように流れて行った
この戦いは総力戦だと聞いている
どこかで生きていた傑が
もうどこにもいなくなる可能性だってあった
全く何も思わないわけじゃなかった
気を紛らわそうと近くの喫茶店に入り
カウンター席に座った
間もなくして隣に桃色の髪の毛の
スタイルのいい女性が入ってきた
他に席は沢山空いていたのにその人は私の隣に座った
「マスター、私もこの方と同じもの」
そうかと思えば唐突にそんなことを言い
驚いて彼女の方を向くと、彼女はニコッと笑みをむけていた
「ごめんなさい。綺麗な方だったのでお友達になりたくて」
「は、ぁ…」
彼女はコーヒーを飲みながら他愛のない話を振ってきた
「ねぇ、これ、私にご馳走させて下さらない?」
「そんな……!」
「いいんです。これも何かの縁ですもの」
そう言うと小声で私に耳打ちをする
「今夜20時。三条大橋の下で。夏油様からの伝言です」
・
「母ちゃん?」
あれから私は時間が訪れるまで散々悩んでいた
元恋人とはいえ、私は夫のいる身
これは裏切りになるのでは無いかと思った
無垢な目を向ける息子をみれば
会うべきではないことも分かっていた
でも私は疲れ切ってしまっていたのか
考えが鈍っていたようだった
「どっか行くん?」
「直輝……お母さんちょっとお出かけしてくるから
良い子に待っててね」
もしかしたら私は傑に殺されるかもしれない
それを頭の片隅に置いていた私は
息子を力強く抱きしめて、家を後にした
・
夜の川辺は想像以上に寒かった
着物にショールを巻いただけの私は手が悴んで
感覚も無くなっているのがわかった
傑の姿も見えないしもう帰ってしまった方が__
そう思った時にふんわりと背後から抱きしめられ
同時に懐かしい匂いがした
「来てくれないかと思ったよ」
冷えた心に触れた温もりのせいか
10年前の思いが溢れ出す
「どうして私を置いていったの」
「…すまない」
「そうかと思えば突然現れて…」
「……すまない…」
一緒にいたかったのに
喉まで出かけて思い止まる
「手がとても冷たいわ…一体いつからいたの…?」
「さぁね」
「私が来なかったらどうするつもりだったのよ…」
「でも君は来てくれた」
ぎゅ、と一層強く抱き締めてくるその腕の中で
貴方に殺される覚悟でね、と心の中で私は話していた
「今更私に何の用?」
「そう警戒しないで。なんとなく君の事が気になってね」
・
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作者 - プスメラウィッチさん» お久しぶりです!前作からお読みいただいてくださってましたよね(*^^*)当作は今後のものも含め、全ての物語において既にオチは決まっておりますか続きを楽しみにされる方の為に断言することは避けております、申し訳ありません。ですが楽しんでいただけたらと思います! (2022年7月22日 21時) (レス) id: 32dd956d28 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年7月20日 11時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - る。さん» 初めまして!コメントありがとうございます!究極の2択ですよね……(涙)今後の主人公の動きを見守って上げてください…! (2022年7月7日 6時) (レス) id: 32dd956d28 (このIDを非表示/違反報告)
る。(プロフ) - 初コメ失礼します!五条先生オチであってほしいけどなんというか複雑(涙)更新待ってます!!! (2022年7月6日 0時) (レス) @page12 id: 3ca3e54ab4 (このIDを非表示/違反報告)
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