-心燃-【煉獄杏寿郎】

治療 ページ21

ゆっくり瞼を開ける。

白い天井。

腕に包帯。

のそのそと起き上がった。


｢あ！目覚めましたね。おはようございます｣

｢しのぶさん…ここは？｣

｢蝶屋敷です。炭治郎くんとは別のお部屋ですよ｣

｢そうなんですね｣


それから薬の服用と、機能回復訓練を炭治郎くんと一緒にすることを説明された。

本気で頑張らないと。

煉獄さんを守る。


｢それじゃあ私はこれで｣

｢ありがとうございます｣


しのぶさんの背中を見送り、ため息をつく。

誰もいない。

静かで、冷たい。

あの頃を思い出す。





確か、小さい時だった。

夜の稽古が終わって、お迎えが来てると思った。

誰もいない。

雨が降っていた。

先生に言おうとしたが、振り返っても誰もいなくて。

もう剣道場は閉まってた。

携帯なんて持ってるはずない。

泣きながら、雨の中歩き回ったっけ。

走る車に水飛沫をかけられて。

お母さんは、私の兄が事故にあったことを知って、すっかり忘れていたらしい。

そう、だから、私には兄がいない。

それを聞いた時は、雨の音なんか聞こえないくらい、何故か静かで。

そう、本当に、冷たかった。


｢…あ、れ｣


服を見ると、シミがついていて。

泣いていることに気づく。


｢……煉獄、さんっ｣


なんでだろう。

あなたの名前を呼ぶと落ち着くのは。


｢…A！大丈夫か！｣


今一番、会いたい人の声がした。

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